Jeff Loomis Special Interview(前編)

1月 18, 2022

Text by Daishi Ato / Translation by Kyoko Maruyama

今回登場するのはジェフ・ルーミスだ。過去、このインタビューに登場したギタリストはひとつのバンドやソロを中心にキャリアを築き上げた人たちばかりだが、ジェフはネヴァーモアのギタリストとしてキャリアをスタートさせ、現在はアーチ・エネミーのメンバーとして活躍するだけでなく、昨年にはアルカトラズへの加入も果たすなど、長年にわたって様々なバンドやミュージシャンとステージやレコーディングを共にしている。多くのギタリストに影響を与える独特なプレイスタイルを持ちながら、あちこちからその技術を求められるジェフのギター哲学に迫った。

 

― ジェフさんがギターを弾き始めたきっかけはなんだったんですか?

 

うちの親父だよ。家には父の膨大なレコード・コレクションがあって、子供の頃から僕はいろんなジャンルの曲をいつも聴かされていた。その中でも70年代の、カンサスとかELOとかクイーンに僕が反応していることに父は気づいたんだ。「楽器を弾いてみたいか?」と父に聞かれて、僕は「弾きたい!」と答えた。でも最初に選んだのはドラムだったんだよ。僕がドラムからスタートしたことを知らない人も多いと思うけど、ドラムをやってたおかげでタイム感やリズムを身につけられたし、音楽や曲作りにとってそれが重要だってこともわかった。でも、飽きたというよりも、ドラムでは自分の気持ちを表現しきれない気がしてすぐに辞めてしまったんだよ。

 

― そうだったんですね。

 

ある日、父のクラシック・ギターがケースに入ってクローゼットにあったのを引っ張り出し、弾き始めたんだ。するとすぐに、こっちの方が自分を表現しやすいってことに気づいた。だから父のクラシック・ギターが全ての始まりなんだよ。9〜10歳頃だったと思う。

 

― 当時のギターヒーローは誰でしたか?

 

それはもう間違いなくエディ・ヴァン・ヘイレンだね。1stアルバム『Van Halen』――ってこれも父親が買ってくれたんだった、ありがたいことに(笑)――のオープニングで車のクラクションが鳴った瞬間からあのパワフルなサウンドに圧倒されて、エディが僕のナンバーワンになった。他にも影響を受けたギタリストは大勢いるけれど、なんと言っても彼だね。聴けばすぐにエディだとわかるサウンドだった。美しいトーン、集中力とテンションが途切れることのないプレイ……本当に素晴らしいギタリストだった。彼の音楽は今も生きている。そのことを僕らは幸運だと思うべきだよ。

 

― 当時、どんな練習をしていたんですか? 何か決まったルーティンはありましたか?

 

特になかったよ。うちは両親ともに教師で、父親は心理学、母親は英語を教えてた。となると、息子がギターを弾くのはあくまでも趣味ととらえて、僕がギターを30分弾いたら「勉強しなさい」と言い出しそうだろ? ところが実際はその逆で、僕が音楽に関してやることすべてに協力的な親だった。そういう意味じゃすごく恵まれてたね。

 

― そうだったんですね。

 

僕は音楽論も譜面の読み方もわからなかったから、すべては耳から学んだんだ。父親がTVでニュースを見ている横で、CMが流れると僕はその音楽を真似て弾いていたから、いつも父から「どうしてそんなことができるんだ?」と不思議がられていたよ。昔から耳コピができる耳があったということだね。自分で意識して練習をするようになったのはずっと後のことで、最初はただ弾くのが楽しくて弾いているだけだったんだ。大袈裟じゃなく、1日10〜12時間は弾いてたと思う。でも僕がそれだけギターが好きだということを理解してくれてた両親は、何も言わずにやらせてくれた。それがあったからギターは早く上達して、16の頃にはかなり弾けるようになっていたんだ。

 

― レッスンとかも受けていないんですね?

 

もう少しあと、ティーンの後半に受けたことはあったけど、正直、今の自分をつくったのはほぼ独学で学んだおかげだと思ってるよ。

 

― 弾いていて楽しかった曲は?

 

そうだな、オジー・オズボーンの「Crazy Train」!  あれが初めて覚えて弾いたリフだったよ。あと、アイアン・メイデンの「Where Eagles Dare」。僕が初めて覚えて、弾いてて楽しかったのはこの2大メタル曲だな。

 

― Jacksonギターとの出会いを教えて下さい。

 

信じられないかもしれないけど早かったね。16歳の時に母親から買ってもらったのがJacksonギターだった。その後、常にJacksonギターを持ってた。クオリティの高いギターで、数々のトップ・プレイヤーがJacksonを使用していると知っていたから興味があったんだ。今、こうしてJacksonチームに入り、ファミリーの一員になれたことが本当に嬉しいよ。世界一のギターだと僕は信じているからね。

 

― クオリティの高さは最初から知っていたということですが、実際に弾いてみてJacksonのギターの魅力はどこですか?

 

楽器としてのクオリティの高さに尽きる。Jacksonのことを知ってからこのギターについて読んだりしていくうちに、カリフォルニアのCustom Shopのことを知って、楽器が生み出される影にマイク・シャノンらの素晴らしい職人たちがいることを知った。そこで、「このCustom Shopっていうのはなんなんだ?」とより一層興味を持ったわけだ。その魅力は、Randy Rhodes VやKelly、Soloist モデルなどに代表されるルックスのよさは当然ながら、なんといってもクラフトマンシップとギターとしての演奏性。とにかく弾きやすい。フレットはスムースなのでビブラートやベンドもしやすい。そこが最大の魅力だね。

 

Jaff Loomis B

 

― ジェフさんのシグネチャーKellyの特徴を教えてください。

 

まずネックが僕の好みどおりなんだ。さっき話したCustom Shopのマイク・シャノンがサンディング・マシーンで少しずつ削って、それを僕が握ってはチェック。「もう少しだけ薄くしてくれ」「もう少しだ」というのを6〜7回繰り返し、完全にしっくりくる厚さに仕上げてくれた。そんな風に作ってもらえたのは初めてだったから最高だったよ。フレットはジャンボ・サイズの大きいものなので、ベンドもビブラードもしやすい。あと、ロゴがこれまでにないクールなもので、ペイントではなくメタルでできた装飾ロゴなんだ。ボディはサンドブラスト・アッシュ。焦がしたみたいな仕上がりでとてもクールなんだ。そしてボディ全体とネックの外周がバインディングで縁取りされている。フレットにはシャークフィン・インレイ。ネックのサイドマーカーは1秒ずつ光るLuminlayを用いているので、暗いステージで弾く時にとても役に立つんだ。Floyd Roseのトレモロ・システムは、スクリューで回して取り外すタイプが一般的だけど、これは引き抜いたり押し入れて装着するpush-inスタイル。Floyd Roseのスクリュー・アームだと装着の際にノイズが出て、それをピックアップが拾ってしまうことがあるんだけど、これだとその心配がない。ボリューム・ノブは1個だけ。普通はピックアップ・セレクター・スイッチがある位置に、ボリューム・ノブがあるものだけど、僕はその場所を逆にした。音量は常に10で、リードを弾く時はピックアップ・スイッチを操作する。こうすればソロの途中でもピックアップにアクセスするのがすごく楽になる。ピックアップは僕のシグネチャー・モデル Seymour Duncan Jeff Loomis Blackout Pickups。基本、高出力のピックアップだけど、早弾きをしても実に歯切れよくいい音で拾ってくれる。とにかくゴージャスで、弾きやすい、バランスの取れたギターだね。膝の上に乗せて弾いてもぐらつくことなく安定感がある。見た目はとてもアグレッシヴで、とてもヘヴィメタルなギターだ。そこも僕の気に入っているところかな(笑)。Custom Shopと輸入のPro Series、どちらでも購入可能だよ。

 

― どんなプレイヤーにオススメしますか?

 

アグレッシヴなメタル系プレイヤーに一番勧めたいけど、すべての人のためのギターだよ。実際、知り合いの女の子は見た目がカッコいいからという理由だけで買ってくれた。最高に器量のいいギターだから、そう思ってくれる人は多いよ。まあ、あらゆるプレイヤーに勧めるけど、アグレッシヴなメタル・ギターではあるので、今、僕がいるアーチ・エネミーのようなバンドには最適だね。

 

―先ほどもオジー、エディ・ヴァン・ヘイレン、ELO……様々な影響を教えてくださいましたが、どうやってジェフ・ルーミス・スタイルと呼べるものを確立でと思いますか? なかなか説明しにくいでしょうけど。 

 

ああ、とてもいい質問だね。こればかりは年月によって作られるものだよね。毎日、何時間も弾き、努力を重ねることで自分のスタイルは確立される。たまに「○○のレコードで君がゲストで弾いたソロ、聴いた瞬間に君だとわかったよ」と言われることがあるけど、プレイヤーとしてそう言われる時ほど嬉しいことはない。他に50人ギタリストがいたとしても、聴いて一発で自分だとわかってもらえるトーンや弾き方があるっていうことがね。それは時間をかけることでしか培えない。僕は今50歳で、40年近くギターを弾いてる計算になるけど、その間、たくさんの時間ギターを弾き、聴いてきた。そういった過去に影響を受けてきたもの全部が絵の具のようになって、大きな絵が描き出され、やがてそれは自分の絵になる。これまで誰かを真似ようとコピーしたことは一度もないよ。常に、その時一番の自分であろうとして、そこに自分らしさを加えようとした。そうすることでジェフ・ルーミスらしいものになるようにね。特に、ビブラートには気を使ったかもしれない。ベンディング・ノートさ。ビブラートといえばマーティ・フリードマンだよね。彼が弾くのは、美しいのにアグレッシヴで、それと同時に繊細な曲が必要とするビブラートだと思う。ま、とにかく十分な時間をかけて、どうすれば自分がかっこよく聞こえるかってことを探すことだね(笑)。

 

― ソロではハードな曲だけでなく、美しいメロディも書かれていますが、ソングライティングをする上で影響を受けた人は誰ですか?

 

クイーンのブライアン・メイ。素晴らしいソングライターだ。あとはクラシックの作曲家も聴いていたよ。ショパンの、美しいメロディとパートによってアグレッシヴなところが好きだ。僕は、完璧なヘヴィさと美しさという異なる次元にあるふたつを合体させたいと思ってるし、実はかなり若い頃からそうしてきたんだよ。

 

― そうなんですね。

 

ベッドルームにこもってずっとギターの練習に明け暮れていたかというとそうではなく、曲も書いていたんだ。録音機能のあるラジカセとか、4トラック機材とか、いつもなんらかの録音機材を持っていたから、それを使ってメロディやハーモニーの断片を書いて録音していた。練習をすることは自分を行きたい場所に連れて行ってくれるかもしれないけど、ミュージシャンとして語る言葉を持つには曲を書くということが重要なんだ。だからプレイヤーのみんなには、ベッドルームばかりにこもってないで、外に出て他のミュージシャンとジャムることを勧めるよ。

 

― ジェフさんは幼い頃からいろんな音楽を聴いてきていると思いますが、たくさんある音楽の中でなぜメタルにそこまで惹かれたんでしょうか?

 

その答えは自分でもわからない。でも昔からずっとそうだったんだ。19の時に西海岸に移ったのはメタル・バンドに加入するためだった。僕としてはずっとソングライターになりたいというだけだった。でも、気づけば一つのカテゴリーに収められるようになった。メタル、そしてリード・ギタリストというカテゴリーさ。なぜかは自分でもわからないけど、長年続けているうちに今の自分というプレイヤーが形作られていったんだと思う。好きな音楽ということであれば、昔からあらゆるスタイルが好きだったよ、ジャズもメタルもクラシックも。でも最終的にはいつもメタルに戻っていた。メタルが一番自分のよく知っている音楽、聴いて育った音楽だったからだ。一番最初にできた親友スコットからアイアン・メイデンの『Piece of Mind』を聴かされた時の衝撃は、何かが僕の中に入り込んだみたいで一生消えないものになった。いつも血の中にメタルが流れてる、って感じだよ(笑)。メタルはアグレッシヴな音楽だけど、今のような厳しい時代は特に聴いてて楽しいよ。助けられるというか、むしろ魂を癒してくれることもある。結局は音楽の持つヘヴィさが好きなんだろうな、僕は。

 

後編に続く(近日公開予定)

 


ジェフ・ルーミス

米ウィスコンシン州生まれ。シアトルを拠点とするプログレッシブ・メタル・バンド、ネヴァーモアで注目を集めると、バンド脱退後は『Zero Order Phase』(2008年)と『Plains Of Oblivion』(2012年)と2枚のギター・ソロアルバムをリリースし、批評家の称賛を浴びる。2014年、アーチ・エネミーにリード・ギタリストの一人として加入。世界中でライブを行う。その独特のリズムスタイル、滑らかなテクニック、そして猛烈なスピードのプレイで、メタル界にその名を刻んでたギタリスト。

 

Jeff Loomis OfficialWeb

https://jeffloomis.net/