Misha Mansoor Special Interview(前編)
4月 18, 2025

ギターを弾き、ギターに夢中で、ギターの仕様にこだわっている人間が作るギターだからこそ、他のギタリストの心にも響くんだ
約3年ぶりにMisha Mansoorのインタビューが実現した。今回のメインテーマは、4月に発売される自身のシグネチャーモデルPro Plus Series Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6について。プロのミュージシャンにも使用者がいるほど好評を博しているモデルの新作は、彼がプレイヤー目線で徹底的にこだわった1本。それは、彼の口から溢れてくる膨大な情報量の解説からもよく伝わってくる。前編となる今回は、新モデルの魅力についてたっぷり語ってもらった。きっと、購入の参考になるはずだ。
Text by Daishi Ato / Translation by Kyoko Maruyama
― 早速、この4月に発売となったPro Plus Series Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6について聞かせてください。
これは僕の6弦 Pro Seriesの3世代目になるものなんだ。1世代目の時点でかなり強力なコンセプトがあるものだったから、大きく変更するというより、より洗練された形になったと言うべきかな。
― なるほど。
具体的には、工場の技術が進化し、以前はできなかったことが実現可能になった。たとえば、ついにステンレス・フレットを搭載できるようになったんだ。それがこの価格帯で実現できたのはすごいことだよ。あと、好みの変化や進化を求める気持ちから、最初はエボニー指板だったのが、ローステッドメイプル(キャラメライズドメイプル)指板へと変わった。そして、オリジナルモデルにはキャラメライズドネックはなかったけれど、今回はキャラメライズドネックとエボニー指板の組み合わせになっている。弾き心地もサウンドも抜群のコンビネーションだよ。また、20インチラジアスを維持しているのも大きな特徴だね。フラットなフレットボードが好みなら、これは数少ない選択肢のひとつになるはず。ステンレススチールのフレット、美しいエボニー指板、安定して滑らかなキャラメライズドネックが揃っているから、手にした瞬間、その違いをすぐに感じられるはずだし、演奏が一気にスムーズになると思うよ。
― それ以外に変更点は?
それ以外はカラーだけかな。でも、色の品質がさらに進化したんだ。ブルー・スパークルと、日本にインスパイアされた“レッド・クリスタル”。僕は、マツダ・ロードスターのMazda Soul Redが世界最高の塗装だと思っていて、それを再現しようとしたんだ。ブルー・スパークルも驚くほどよく仕上がったね。ちなみに、通常のブルーは“リビエラ・ブルー”と呼ばれるポルシェのブルー。クールな明るい青で、EverTuneブリッジによく似合うんだ。
― ポルシェといえば、あなたのSNSにはスーパーカーの写真がいっぱい上がってますよね。あれは全部自分の車なんですか?
まさか!(笑)。自分のもあるけれど、多くは試乗車だよ。1週間試乗してレビューを書く、という仕事をしているんだ。LAには車をしっかりと体験できる美しい道があるからね。僕にとって、車を運転するのとギターを弾くことには多くの共通点がある。どちらも楽しいし、練習してもっと上手くなりたいと思えるんだ。追求心という点では、どちらもとても似ているよ。
― ギターの話に戻りましょう。以前のインタビューで、スルーネックギターよりもボルトオンギターのほうが好きだと話していましたよね。ボルトオンギターの魅力について聞かせてください。
長い答えと短い答え、どっちがいい?
― では、短めでお願いします(笑)。
ボルトオンのほうがアタックがより強くてシャープで、モダンな音が出ると思うんだ。そして、何よりもサウンドが違う。
― ひょっとして、Juggernautという名前はPeripheryの作品と関係あるのでは。
そう。このギターのデザインをしていたとき、ちょうどPeripheryで『Juggernaut』というコンセプトアルバムに取り組んでいたんだ。今までで最も大掛かりなプロジェクトで、あれ以上壮大なものはつくったことがない。だから、自分にとってとても重要な意味を持つ名前なんだよ。だから、このギターにもその重要さや意義を持たせたかったし、強烈でぴったりな名前だと思ったんだ。
― デザインも自分でやっているんですね。
ああ、Jacksonとの共同作業だけど、こういうデザインにしたいというアイデアは僕のものだよ。だから、いろんな会社からもらったカスタムギターの中から好きなパーツだけを組み合わせて、ベストなものを作ったんだ。つまりこれは、僕が欲しいと思う、僕にとって完璧なギターってことだね。このギターができてからは他のギターは全部売り払っちゃったよ。どれもこれ以上のものじゃなかったからね。
― デザインはどこから影響を受けているんですか?
昔からSuper Strat が好きだから、形という視点ではそこからの影響が大きいかな。特に、Super Stratのアーチが好きだから、絶対アーチトップにしたいと思ってたんだ。それ以外の細かいデザインは、自分が持ってたいろんなギターの組み合わせ。ヒールや、前からは見えない部分― たとえば、ホーンのカーブや、手のためのスペース部分とかも考え抜いてデザインしたよ。
― EverTune ブリッジ搭載モデルを使うのはどういった目的があるんですか?
スタジオでのレコーディングでは必ずEverTune搭載のギターを使うんだ。他のギターも使うけど、EverTuneは本当に楽。それに、僕たちの曲にはすごく変則的な低音弦を使うチューニングの曲があって、たとえば「Reptile」はCGCFADの代わりにGGCFADを使っているから、EverTuneなしでは低音の安定性を確保するのが非常に難しい。特にライヴでEverTuneなしでは演奏できないよ。Peripheryにはそんな曲がいくつかあるんだ。
― Misha Mansoorモデルのギターは多くのユーザーから支持を得ていますが、どういうところが人々を熱狂させているんだと思いますか?
ギターを弾き、ギターに夢中で、ギターの仕様にこだわっている人間が作るギターだからこそ、他のギタリストの心にも響くんだ。つまり、ギタリストによる、ギタリストのためのギターってこと。企業が作るギターは、たまにプレイヤーの視点を考えてないことがある。僕は、スタジオで使うためのいいギターというだけでなく、ライヴ用のいいギターが必要な人間だから、世界中を巡るツアーにも耐えうる、ちゃんと機能してくれるギターじゃないとだめなんだ。だから、これは弾いてすぐに「ああ、これはどんな状況にも対応できるギターだ」と感じるはずだよ。実際、デザインした僕自身がそう感じてるからね。
― 敢えてお聞きします。世の中には様々なギタリストのモデルが出ていますが、そのどれにも負けない点はどこでしょう。
何がベストかっていうのはその人次第だから一概には言えない。だから、あくまでも僕にとってのベストということになるけど、僕はすごくフラットなフレットボードが好きだから、20インチラジアスが重要なんだ。でもそういうギターはあまり多くない。あと、ピックアップがギターのフィーリングやサウンドに及ぼす影響はすごく大きくて、このJackson® Uncovered MM1ピックアップは、何よりもギターに最適に設計されていて、多用途。メタルだけでなく、ジャズ、インディ、クリーンな音など、幅広く対応できる。スイッチの組み合わせや、2ndと4thポジションでのインナー、アウターコイルのスプリットによって、様々なサウンドを得ることもできる。そんな点がユニークだし、多くの人にとっても魅力的なんじゃないかな。
― これはJacksonだからこそ作ることができたモデルだと思います?
ああ。もちろん、世の中には素晴らしいギターを作っているギター会社はたくさんある。でも、大事なのはコミュニケーションなんだよ。僕が一緒に仕事をしているJacksonの人たちは全員が素晴らしいギタリストだし、僕と同じようなオタクなんだ。彼らは僕が望むクオリティを理解してくれている。だから、すべてのデザインやチョイスが僕一人ではなく、彼ら全員を通して確認されて、その結果としてこれが最高の製品であることが保証されるんだ。それに、僕たちはどんなときも目標がブレることはない。チーム全員がギターに高い期待を抱いて取り組んでいるんだ。自分の技術にこだわりを持っているチームのサポートがあるのはすごくありがたいことだよ。
― 自身のシグネチャーモデルを作ることができるというのは、ミーシャさんをどんな気持ちにしてくれますか?
まさに夢が叶った!という感じだね。いつか自分のシグネチャーモデルを作り、それを多くの人と分かち合いたい、というのはミュージシャンを目指す全てのギタリストの夢のひとつだと思う。
― 何本作っても嬉しいものなんですね。
僕のバンドでは、たくさんのチューニングでいろんなスタイルの曲をやるから、その状況ごとに対応できるギターが欲しくなっちゃうんだよ。それでいくつものヴァージョンやモデルを作ってしまうことになる。だからきっと今後も増えていくと思うよ。
― プロのギタリストもあなたの新しいシグネチャーモデルをすごく楽しみにしているみたいですよ。
それは本当に嬉しいよ。シグネイチャーギターは基本的に自分のために作ったものだから、「クールだけど、僕の好みじゃない」と言われても仕方ないと思ってるんだ。でも、「ライヴで弾きたい」と思ってもらえるくらい気に入ってもらえるのは、本当に嬉しい。Sleep Tokenのシンガーも、僕のSo-Cal ストラト(https://www.jacksonguitars.jp/gear/electric-guitars/mj-series-signature-misha-mansoor-so-cal-2pt-2904008827/3153/?filter=&q=misha)をライヴで使ってくれてるんだ。もちろん、プロ・アマ問わず、僕のギターを選んでくれる人がいるのは嬉しいけど、プロのギタリストが使ってくれているという話を聞くとやっぱり特別な気持ちになるね。
― Peripheryの曲を弾きたいというビギナーのギタリストが最初にトライするとしたら、どの曲がオススメですか? もちろん、どれも難しいということは重々承知の上で聞いてます!
(笑)。ファーストアルバムに入ってる「Jet Pack Was Yes」なら少しは楽かも。最近のアルバムの曲はかなりテクニカルだし……「Atropos」や「Wildfire」の一部ならいけるかもしれないけど、ものすごくテクニカルなパートもあるからなあ……。僕らの曲を弾くためにめちゃくちゃ上手くなる必要はないけど、さすがにビギナーにはちょっと難しいかも。
― さて、3年ぶりのインタビューなのでバンドの近況についても聞かせてください。2年前にリリースしたアルバム『Periphery V: Djent Is Not A Genre』は素晴らしい作品でしたが、かなりの難産だったそうですね。何があったんでしょうか。
パンデミックのせいさ。リモートで曲作りをしようとしたんだけど、やっぱりみんなで集まって作業しないとダメだね。僕らは普段からすごく仲がいいから、どんなにZoomとかでやり取りしても、物理的な距離が離れていると曲が書けるようなヴァイブスはなかなか生まれないってわかった。結局、全員がスタジオに集まれるようになってようやく、アルバムは動き出した。もしパンデミックがなかったらもっと簡単につくれたと思うし、もっと早くリリースできてたはず。再びパンデミックにならないことを願うばかりだね。
― メンバーみんなが一緒にいることの大切さを学んだと。
ああ、日本語で「NAKAMA」って言うんだよね? このバンドは全員が「仲間」で仲がいい。一緒にいるのが楽しいし、一緒に曲を書くのが好き。僕らの曲作りはヴァイブスがすべて。それは全員が1箇所に集まっていないとなかなか生まれないんだ。
― ところで、このアルバムタイトル(ジェントはジャンルではない)について、シリアスに受け取っているリスナーがいるようですが、本人たちとしては半ばジョークで付けたそうですね。
アルバムタイトルはいつも自分たちが笑えるものを選ぶようにしてる。音楽には常に真剣に取り組んでいるけど、それ以外はあまりシリアスになりたくないんだよ。今回も、「話題にされるかな?」とは思ってはいたけど、まさか言葉どおりに受け取られて、議論まで生むとは思ってなかった。それが僕らにはおかしかったわけだけど。
― 前作のアルバムタイトル『Periphery IV: Hail Stan』もそうですし、Peripheryというバンドとジョークは比較的密接な関係にあるように感じられます。
僕たちは一緒にいるといつも冗談を言い合って笑ってるから、そのヴァイブスが曲作りにも自然と反映されるんだ。その流れでアルバムタイトルもふざけて考えるから、提案したものがみんなにウケたら「じゃあ、それで行こう」って感じで決まるんだよね(笑)。いつもふざけるわけじゃないし、『Juggernaut』はすごくシリアスなネーミングだったけど、それで楽しんでる部分はある。
ミーシャ・マンソー
米メリーランド州生まれ。ギタリスト、ビジネスマン、起業家、作曲家、作詞家、音楽プロデューサー。ジェント(Djent)ムーブメントの創始者であり、プログレッシブ・メタル・バンド、ペリフェリーの中心人物として広く知られている。2005年にワシントンD.C.で結成され、グラミー賞にもノミネートされたことがあるペリフェリーは、挑戦的で、中毒性があり、カタルシスを誘う現代のヘヴィミュージックの先駆者的存在。2013年にはMetal Hammer誌のGolden Gods Awardで「Breakthrough Band」に選出。メシュガー、ドリーム・シアター、ザ・デリンジャー・エスケイプ・プラン、アニマルズ・アズ・リーダーズなど、ラウドロック界の様々な分野で活躍するバンドと頻繁にツアーを行い、ステージ上でもステージ以外でも、紛れもないその実力とカリスマ性で高い評価を得ている。
Misha Mansoor Official Instagram
https://www.instagram.com/mishaperiphery/
Periphery Official Web
http://www.periphery.net/
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