Yas Nomura SPECIAL INTERVIEW(後編)
11月 5, 2025
世界中を駆け回るギタリストYas Nomuraのインタビュー後編は、近年の彼の活動についてじっくり話を聞いた。トップアーティストのサポートメンバーとして活躍する中で芽生えた新たな野望など、現在進行系で進化しているギタリストの胸の内に迫った。最後には、Yas自身がギターの練習をする上でためになったという練習方法を聞いている。これはギタリストを目指す人だけでなくとも参考になる内容だと思うので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
今はとりあえず、自分のアルバムを出すことが大事かなと思ってます
― 現在はHYDEさんのワールドツアーに帯同している最中ですけど、ツアーはいかがですか?
めっちゃいい感じです。メキシコ、チリ、アルゼンチン、ブラジルに行って、先週帰ってきたんですけどすごい盛り上がりで。みんな、日本語で歌うんですよね。ギターソロセクションで各国の国家を弾くと大合唱が始まって、イヤモニしててもそれが聴こえるんですよ。あれはすごかったし、めっちゃ気持ち良かったです。
― お客さんの熱量から受けるパワーはやっぱりすごいですか?
もちろんもちろん。演者側は確実に影響されると思いますね。
― 南米ではHYDEさんのツアーとは別に、Yasさん単独でマスタークラスも行ったそうですが、これは現地から声が掛かったんですか?
昔のルームメイトがメキシコ人で、そいつから“メキシコに来るんだろ? だったら、何かやろうぜ”みたいな感じで連絡が来て。それでマネージメントに確認したらOKが出たので、どうせなら他の場所でもやれたらっていうことで、チリは諸々の事情で残念ながら実現しなかったんですけど、アルゼンチンとブラジルでもやることになりました。
― 内容としては、お客さんから質問を受けたり?
ずっと質問形式でやってました。逆に、何も質問されなかったら何を話したらいいのかわからなくなるんで。
― それはテクニック的な質問ですか?
そうですね。あとは、HYDEさんのファンもけっこう来てくれてたんで、そういう話をしたり。ブラジルはテクニック的な話が多かった気がするな。The Resonance Projectのことを聞いてくれる人がいたり、Whom Gods Destroyのファンもいたり、ファンの人たちと直接会えたことは良かったですね。
― YasさんはAIさんのツアーにも参加していますが、これはどんなきっかけだったんですか?
一昨年か去年にインスタでご本人からフォローされて、そこからDMで連絡が来てって感じです。俺、めっちゃ世代なんでAIさんの曲はけっこう聴いてたんですよ。
― AIさんとのツアーはいかがですか?
めっちゃめちゃギターソロを弾かせてくれます。けっこう新鮮ですごく楽しいです。AIさんを含めて、みんないい人ですしね。
― さまざまなアーティストのサポートにつく上で意識していることはありますか?
サポートなので邪魔にはならないようにしたいとは思ってます。あと、AIさんのライヴにはダンサーがいて衣装チェンジの時間があるので、その間にギターソロをめっちゃ長く弾くんですけど、お客さんが飽きないように楽しませることは意識してますね。
― 独りよがりにならないように。
そもそも音楽はそうあるべきだとは思うんですけど、ギターソロがあると楽しいです。そういう見せ場があることで、ちょっと気が引き締まるというか。もちろん、ソロがなくてもしっかり弾くんですけど。

― 先ほども話しましたけど、Whom Gods Destroyにはベーシストとして参加しています。これはどういった経緯で参加することに?
キーボードのデレク・シェリニアンからインスタに直接連絡がきて。“スタジオに遊びに来ないか?”みたいな。そこで曲を聴かせてもらったあと、オーディションとして3曲ぐらい送られてきた曲をレコーディングして送り返して、みたいな感じでした。
― で、合格したという。
そうですね。そこからがまた長かったんですけど。でも、Sons Of Apolloが解散して、マイク・ポートノイがドリーム・シアターに戻って、その後釜みたいな感じで声がかかったので嬉しかったですね。ヴォーカルのディノ・ジェルーシックとはめっちゃ仲良くなりました。ツアーもしたいし、セカンドアルバムを作ろうっていう話もずっとしてるんですけど、みんな忙しくて。
― アルバムを作ってみて、ベースで参加したことがギターにフィードバックされる部分はあるんでしょうか。
レコーディングを通じて、作曲面では影響を受けていると思います。曲はもうできてたんですけど、ベースがギターリフとユニゾンしたりするので、“なるほど”って。あとは、単純にめっちゃいい練習になりました、ベースパートがムズすぎるんで(笑)。“それ、ベースで弾くの?”みたいなのが送られてくるんですよ。
― The Resonance Projectの活動はどうなっているんですか?
今は休止中です。だから、今やるとしたらソロかなっていう。曲はもうあるから、あとはアレンジして、ちゃんと録って、頑張れば来年には出せるはずなので、頑張らないといけないです。
― いろんな道が開けてきた今だからこそ、この先の自分の進化について考えているんですね。
今はとりあえず、アルバムを出すことが大事かなと思ってます。自分のアルバムを出さないと始まらないというか。だから、暇なタイミングでやるべきことをやらないといけないですね。
― でも、暇な時間なんてありますか?
今はないですけど、11月にはツアーが終わるので、12月と来年1月で自分のことをやるつもりです。
― 前回のインタビューでは、これからギターを始めようとしている若い人たちに向けて“いろんな音楽を聴いたほうがいい”というアドバイスをされていましたが、具体的な練習として、Yasさんがやっていてよかったと思うものは何ですか?
楽器をやる上で大事なのは、リズムの良さと耳の良さだと思います。音の良さを把握する能力というか。それって楽器を弾いているうちに成長していくものだと思うんですけど、例えばピアノ経験者がギターを始めると、そうでない人に比べて成長が確実に早いんです。それは音感がいいから。そういう意味では、ただ練習をするだけじゃなくて、上手い人の演奏を見に行ったりするほうが絶対いいと思います。それが耳の良さを育てていくと思うので。あとは、実際に歌うのがいいんじゃないかなと。スケールをやるにしても、その音をちゃんと歌えるようにしたり、その音がどういう響きなのかを理解していくと音感が育つと思います。あと、ゼロからギターを始める人はいい先生に習ったほうが成長が早いと思います。
― 家でひとりで練習するには限界がある。
というよりも、早さが違います。音楽一家だったら耳は自然と肥えるはずなので成長も早いとは思うんですけど、俺は本当にゼロからだったので、最初はめっちゃ大変でした。リズムも音も全然わからなかったし。リズムが悪いとなかなか上手くならないと思うんですよね。これまで俺はレッスンで何人も教えてきたけど、リズムがいい人は上達が早い。レッスンには速弾きをしたがる子がいっぱい来るんですけど、やっぱりリズムが良くないと上達しづらいから“リズムをやれ”って言うんですけど、やらないんですよ。俺も昔、先生からリズムをやるように言われてましたけど、今思うと納得です。自分の場合も、ちゃんと上手くなっていったのはリズムがよくなってからだと思うんで。まずはリズムと耳ですね。例外はないと思います。

(左)AMERICAN SERIES RHOADS RR24 HT
(右)AMERICAN SERIES RHOADS RR24
Yas Nomura
2007年、14歳の時にギターを始める。翌年、2008年、音楽専門高等学校、東京自由学園(現・東京自由学院)に進学し、テクニック、アンサンブル、音楽理論などを学ぶ。2011年、高校を卒業後、1年間、ギタリスト菰口雄矢氏に師事。翌年、2012年、19歳の時、アメリカ、ロサンゼルスに単身で移住、Musicians Institute Hollywood校に入学し、Allen Hinds、Scott Henderson、Dean Brownを始めとするLAのプロミュージシャンから音楽を学ぶ。2014年、MI在学中にベースを独学で弾き始める。
2014年にMIを卒業後、プロギタリスト/ベーシストとしてのキャリアをスタートさせる。2019年には自身のバンド、The Resonance Projectのファーストアルバムをリリース、同年にはギタリストとしてHyde (L’Arc-en-ciel)の全米ツアー(全35公演)にも参加。ベーシストとしてはMateus Asatoのサポートメンバーとして2019年のアジアツアーに参加。2023年からはアメリカ出身のプログレッシヴメタルバンドWhom Gods Destroyでも活動を行っている。2022年11月にThe Resonance ProjectのシングルとそのMVがリリース、2023年には2ndアルバム『Ad Astra』をリリース。
https://www.instagram.com/yasnomuramusic/
https://twitter.com/yasnomuramusic
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