山岸竜之介 SPECIAL INTERVEW(後編)

5月 16, 2025

山岸竜之介のインタビュー後編は、前編に引き続き、先日発売されたばかりのミーシャ・マンソーのシグネイチャーモデルPro Plus Series Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6について語ってもらうところから始まる。メタルやハードロックのイメージが強いジャクソンギターについて、彼はどんな見解を示すのか。理路整然とした彼のギター解説は、初心者にもわかりやすいので必読。さらに、ジャンルにとらわれない活動を続ける彼の近況も聞いた。幼い頃からCharに憧れ続けている彼が、永遠のギターヒーローについて思うこととは―。

 

クリエイティヴに対してストレスがなくなって自分のやりたいことに集中できる

 

― 海外のギタリストは、ジャクソンのギターはジャズでもいけると言う人が多いです。

うん、それはめっちゃわかります。あと、ジャンルも音色ももちろん大事ですけど、僕がギター選びで絶対に譲れないのは弾きやすさなんですよ。僕、めっちゃ弦高を下げるんですけど、普通のギターだとチョーキングで詰まったりするんですよね。でも、このギターは弦高を下げてもちゃんと鳴ってくれるし、引っかからない。弾きやすいってことは、イコール、もっと弾きたくなるってことなので、めちゃくちゃ大事なんです。

 

― どんな曲にも対応できそうですか?

ポップスでもブルースでも全然いける。いい意味でイメージを裏切られました。

 

― 先日、キズのREIKIさんもジャクソンのギターを手にして、“このままステージに出たい”と言ってました。

めっちゃわかります! 弾きやすいってことは、不安要素がないってことなんですよ。それはほんまに大きい。しかも、音作りはアンプやエフェクターでもある程度コントロールできるけど、弾きやすさはギターそのものだから。そういう意味でも、このギターはほんま信頼できます。

 

― このギターにはエバーチューンが搭載されていますが、山岸さんがエバーチューンを知ったきっかけや、実際に使ってみた感想を、エバーチューンのことをよく知らない人にもわかりやすく教えてもらえたら嬉しいです。

エバーチューンは、メタルのギタリストとかフュージョン系の人たちが使ってるのをネットで見て“なんやこれ”って思ったのがきっかけです。普通のギターだと、ピッキングを強く弾いたら弦がシャープしたり、チョーキングすると他の弦も上がったりするじゃないですか。でも、エバーチューンだとそれがないんですよ。フレットによるピッチのズレもかなりなくなりますね。

 

― なるほど。

あと、レコーディングの時だと特定のフレーズに合わせてチューニングを微調整したりするんですけど、エバーチューンならそれもしなくていい。ヒップホップとかオートチューンのかかったヴォーカルと合わせる時は特にピッチ命が大事だし、ちょっとのズレも許されない世界だけど、エバーチューンだと安心してできるんですよね。

 

― デジタルミュージックとの相性がいい。

めっちゃいいと思います。もちろん、アナログな音楽でも使えるけど、せっかくならこのピッチの良さを活かしたいですね。だから、今までやらなかったようなフレーズとか、高いところから低いところへ跳ぶとか、そういう挑戦もしやすい。クリエイティヴに対してストレスがなくなって、自分のやりたいことだけに集中できるんですよ。めっちゃ面白いし、画期的だと思いますね。

 

― 音楽の幅が広がりますね。

そうですね。最近の僕は、ギターだけ弾く仕事ってほとんどなくて、楽曲提供とか作編曲のほうがメインなんですけど、曲作りの最中にパッと手に取ったギターのチューニングが狂ってないってめちゃくちゃ助かるんですよ。アイディアが逃げへんし、正解に近い状態で作れる。ライヴでも、温度や湿気でコンディションが変わったりするけど、エバーチューンだと安心感が段違いですね。

 

― このギターをどんな人におすすめしたいですか?

やっぱり、ジャンル問わず弾きやすさと音の良さを求めてる人ですね。ペリフェリーが好きな人はもちろん、クリーンな音が好きな人とか、オールジャンルで弾きたい人にもめっちゃいいと思います。特に最近って打ち込みや同期を使ったライヴが主流だから、ピッチ感がめっちゃ大事じゃないですか。そういう意味でも、今の時代にマッチしたギターやなと思います。

 

― ジャクソンを買うか迷ってる人たちに向けて、“弾きやすさ”とか“弦高を下げられること”のメリットをもう少し噛み砕いて教えてもらえますか?

弦高って、わりと上級者になってから気にしはじめる部分だと思うんですよ。ネックの反りを直すとか、オクターブチューニングを調整するとか。でも僕は、小さい頃からずっと思ってたんです、“何でプロの人たちって、あんなに楽々弾いてるように見えるんだろう…?”って。のちに知ることになるんですけど、それは技術だけじゃなくて、ちゃんと自分に合ったセットアップがされてるからなんですよね。それで、僕自身もいろいろと試した結果、“左手だけで音が鳴るぐらい低い弦高”が一番自分に合ってることがわかったんです。弦高を下げられないギターしか持ってなかったとしたら、そのことに気づくことすらできなかったと思うんです。高い弦高も低い弦高も選べる、その幅があるというのは、自分のスタイルを見つける上ですごく大事だと思います。

 

Ryunosuke Yamagishi D

 

― 山岸さんが今、ジャンル問わず音楽に関わる理由はなんですか。

もともと僕は、ギター単体で聴いてカッコいい、という宗派にいなかったんですよ。自分の中では、バンド全体がカッコいいからギターもカッコよく聴こえるっていう感覚で。言い換えると、ギターだけがカッコいい音楽には惹かれなかった。全部の楽器がカッコ良くて初めてギターもカッコ良くなると思ってるんです。

 

― その感覚はもともとあったもの?

中学生くらいの時にはいろんなジャンルを聴くようになってましたね。当時は学校でボーカロイドが流行ってたし、ジャパレゲとか湘南乃風とかも友達が聴いてて。あと、ちょうどEDMが出てきた頃でもあって、ダブステップとかも流行りはじめてたので、ギターが鳴ってない音楽にも初めて触れるようになって。さらに、ちょうどその頃にYouTubeが盛り上がりだして、いろんなアーティストがミュージックビデオをバンバン出すようになってたんですけど、そういうのを見ていく中で僕がたまたま一番ハマったのがヒップホップだったんですよ。ヒップホップでギターが鳴ってるってなんか新しいなって。レコードからサンプリングするというヒップホップの文化の中で、生楽器を弾くというのがすごく面白いと思ったんですよね。そういう経験を通じて、楽曲全体として見た時に、カッコいいギターってこういうことやな、って自然に思うようになったんだと思います。

 

― 生粋のギタリストってギターに特化するイメージがあったんですけど、そんなふうに自由な発想で音楽を聴いていることはすごく興味深いです。

正直、自分のことを“ギタリストです!”ってあんまり思ってないんですよね。ギターはもちろん好きですし、ステージに立つ時のメイン楽器ではあるけど、ギタリストがカッコよくいられるのって、曲があって、他の楽器があってこそだと思うんですよ。だから、自分で曲を作ったり、他の楽器のこともよく知るということは、結果的に自分がギターを弾く時の存在意義につながると思ってるんです。ペリフェリーの音楽やミーシャにもそれをすごく感じていて。彼のギターがカッコいいのは、楽曲自体がカッコいいからだと思うんですよね。楽曲の中で輝いてるから、ギタリストとしてもカッコいい。

 

― なんだか、ギタリストというよりも、プロデューサーと話をしているような気分になってきます(笑)。

ここ数年は特に、作編曲も自分でやりながらギターも弾く、っていうスタイルになってきました。ミーシャもそうですけど、コンポーザーであり、サウンドプロデューサーであり、ギタリストでもある。ギターが好きだからこそ、楽曲を作ることでギターを輝かせる方法が自然とわかる。

 

― 大事なのは、楽曲がカッコいいからこそギターもカッコよく聴こえるということ。

まさにそうですね。そのほうが、ギターを始めたいと思う子もきっと増えると思うし、ギターの間口も広がるんじゃないかと思います。

 

― 山岸さんの直近の活動としては、VIGORMANのツアーサポートがありますね。

VIGORMANくんはレゲエ出身のシンガーなんですけど、変態紳士クラブでも4年くらい一緒にやらせてもらっていて。生演奏とトラックの融合というアプローチは、ギターをやってきた自分ならではの強みだと思ってます。それを活かしていろんな表現に挑戦していきたいですね。

 

― 新しい挑戦をする一方で、日本武道館でのCharさんとの共演も控えています。

はい、それも本当に楽しみです。小さい頃からCharさんにはずっと憧れていたので、いま一緒にプレイできるのはすごく光栄です。こうやって共演できるようになっても、Charさんに対する憧れや尊敬はまったく変わらないんですよね。むしろ、その想いはさらに強くなってます。

 

― 山岸さんは音楽に対して本当に誠実に向き合っていますね。

そう言っていただけるとすごく嬉しいです(笑)。

 

― では最後に、ギター初心者の皆さんにアドバイスをお願いできますか?

楽しんでやることが一番だと思います。それは当たり前だと思うかもしれないけど、自分が弾けなかったものが弾けるようになった時の達成感って、すごく癖になると思うんですよ。たとえ人に見てもらえてなくても、家で一人で弾いていたとしても、ちゃんと自分の中で喜びになる。その喜びって、きっといくつになっても続くものだと思うんです。だから、その“できた!”という感覚を好きになれたら、ギターも音楽もずっと好きでいられると思います。

 

Ryunosuke Yamagishi E

Pro Plus Series Signature Misha Mansoor Juggernaut HT6

 


 

山岸竜之介

幼少の頃、『さんまのスーパーからくりTV』にてCharとギターセッションし、一躍注目の存在となる。その後、プロのアーティストと共演を重ね、ギターの殿堂『EXPERIENCE PRS in JAPAN』への出演も果たす。KenKen、ムッシュかまやつとともに結成したファンクバンド“LIFE IS GROOVE”では、〈RISING SUN〉や〈SUMMER SONIC〉、台湾の大型フェスにも多数出演し、10代にして音楽の聖地であるBlue NoteやBillboardでのバンドとして単独ライヴも果たした。これまでにソロアルバム1枚、シングル5枚を発表。全ての楽曲の作詞・作曲は山岸自身が行なっている。また、ギタリストとしてブロードウェイミュージカルの参加、楽曲提供、数々のミュージシャンとコラボレーションを行っている。

https://ryunosuke-gt.com