Yas Nomura INTERVIEW(後編)
10月 28, 2022
Text by Daishi Ato
後編となる今回は、ジャクソンギターとの出会いから話はスタートする。Yas Nomuraがジャクソンギターで最も評価する部分とは。さらに、LAを拠点にしている彼だからこそ話せるLAのシーンについてのリアルなエピソード、音楽シーン全体におけるギターの存在感について、HYDEとの全米ツアーで学んだことなど、興味深い話がたくさん披露された。最後には、海外での音楽活動を志すプレイヤーへのアドバイスももらっているので、じっくり読んでもらえたらうれしい。
― ジャクソンギターとの出会いはいつなんですか?
実は今年3月にジャクソンのアーティストリレーションからインスタ経由でメッセージが届いて、「新しく出すギターのプロトタイプを試してほしい」って。
― 突然ですか?
そうです。それで近くのスタジオに行って試したのが初めてなんですよ。もちろん、ジャクソンのことは知ってはいましたけど、今まで一度もちゃんと弾いたことはなかったと思います。
― ジャクソンに対してどういうイメージを持っていましたか?
80年代のシュレッド系の、マーティ・フリードマンとかスコット・イアンが使ってるイメージですね。
― 実際に弾いてみてどうでしたか?
すげえ弾きやすいですね。ネックがめちゃくちゃいいです。俺、フロイドローズがあまり好きじゃないんですけど、フロイドローズのギターの中では音も含めて圧倒的にいいです。フロイドだとけっこう音が細くなっちゃうんですけど、これはそんなこともなく。
― 今回、Yasさんはアメリカ製最新モデル『AMERICAN SERIES SOLOIST SL3』のショーケース動画に出演していますが、話をもらったときはどう思いましたか。
ありがたかったですね。「俺がやっていいのかな……?」って。でも、ひとつ不満があって、撮影では30回ぐらいジャンプしたんですけどビデオでは全く使われなかったので、今度ジャンプバージョンも作ってもらいたいです(笑)。
― 友達から連絡はあったりしましたか?
みんなすげえ褒めてくれましたね。
― それでは、このギターの魅力をもう少し教えてください。
俺の中ではネックが一番大きいですね。薄くて小さめなのかな? あと、スルーネックもいいです。スルーネックのギターはこれまで持ったことがなかったので、ここに何もないのはいいですね。
― 弾きやすさを求めるあまりにネックを薄くしすぎると、音に対する影響が大きくなって音が軽くなったりしてしまうということで、ジャクソンはあくまでもトーンと弾きやすさを両立しているそうです。
薄いだけじゃないのはたしかにいいですね。あと、音もいいです。フロイドってあまりキレイなクリーンが出ないイメージなんですけど、このギターはすごくいいと思います。
― もちろん、バキバキに歪ませてもいいんですけど、「クリーンも意外と使える」という声は日本のプレイヤーからも届いているそうです。メタル以外のジャンルでも使いやすいみたいですね。
確かに、ブルースみたいな使い方でもいい音が出るんでびっくりしました。あとは見た目がカッコいいです。
― Yasさんがギターに最も求めるものはなんですか?
音と、弾きやすさと、チューニング。あとはアームが付いてるほうがいいですね。アームを使うときにチューニングが安定することが大事です。
― 今、世界的にロックの人気が落ちていて、アメリカのヒットチャートもヒップホップばかりになっていますけど、今の世界の音楽シーンにおけるギターの立ち位置についてどう考えてらっしゃいますか?
二極化するんじゃないかと思ってます。ミュージシャンの間だけかもしれないけど、ギターはプログレシーンでは盛り上がってるし、ネオソウルでも必要とされてますよね。ほかのジャンルでも音源にギターは入ってないけど、ライブだとすげえロックなアレンジにする人が多いじゃないですか。そういう形では残っていくのかなと。もちろん、バンドの人気が戻ってくればいいんですけど、なかなか難しいですね。
― 音源だとギターは好まれないんでしょうか。
多分、そうなんでしょうね。音源だと流行に寄せないといけないけど、ライブはエンターテインメントじゃないですか。だからギターの音圧も必要だろうし、チョーキングなんかは誰もがカッコいいと思う技術だし。
― ギターの需要がなくなったわけではなくて、求められるところでは求められると。
マテウスがブルーノ・マーズとやったときは、マテウスだけでギターソロを3分ぐらい弾いたんですよ。もちろん、マテウスはプレイヤーとして完全にトップクラスなので当然なのかもしれないですけど、チョーキングとか速弾きを観ながらすげえ観客が湧いてて。だから、なんだかんだ重宝はされると思うんですよ。リアーナがヌーノ(・ベッテンコート)と一緒にやってたこともあるし。
― へぇ~!
リアーナのライブはめちゃくちゃロックなんですよ。もしかしたら、いまの流れはそこから来てるのかもしれないですね。
― Yasさんは2019年にHYDEさんの全米ツアーにギタリストとして参加しましたが、これはYasさんにとってどんな経験でしたか。
まず、めちゃくちゃ楽しかったですね。さっきも話しましたけど、ラルクは昔から好きだったのでドリーム・カムズ・トゥルーですよ。HYDEさんはその次の年に俺のライブも観に来てくれたし、メンバーの人たちにもご飯へ連れてってもらったし、クルーも含めてみんないい人でした。
― このツアーから学んだことは?
ステージプレゼンス(ステージでの存在感)ですね。見せ方はもともと考えるほうだったんですけど、HYDEさんのツアーでは頭を振りまくったせいで首をおかしくしました(笑)。
― そもそもどうやってツアーに参加することになったんですか。
ちょうど1年半日本にいたときに先輩づてに話をもらって、自分のプレイ動画を送ったんですよ。頭を振ったりジャンプしながらHYDEさんの曲を弾いたら採用してもらえて。でも、動きまくってる動画で採用してもらえたということは、ライブでも動きまくらないといけないじゃないですか(笑)。頭を振りながら弾くって意外とめちゃくちゃ難しいんですよ。普通にリズムがズレますし。
― ちゃんと弾けることはもちろん大事だけど、それだけじゃダメだという。
そうですね。ステージプレゼンスはかなり大事だと思います。自分でやってるプログレのバンドだと曲が難しすぎてあまり動けないんですけど、最低限は意識してます。もともとギターを弾いてると体が動いちゃうタイプなんですけど、髪をブワッとなびかせたり意識してやってますね。
― では最後に、これからギターを始めようとしている若い人たちにアドバイスをお願いします。
いろんな音楽を聴くのはすごく大事だと思います。メタラーだとしても枠にとらわれず、メタル以外の音楽もできるだけ聴く。聴いて好きじゃなかったらしょうがないけど、いろんなものを聴こうとする探究心は大事じゃないですか。あとは、上手い人と友達になることですね。それもすげえデカいと思います。俺も周りに上手い人がたくさんいたことで勉強になりました。
― 海外で音楽の勉強がしたいと思っていても、言語の壁で躊躇してる人もいると思います。
俺も最初はまったく喋れなかったけど、来ればなんとかなるんじゃないですかね。そこを飛び越えてくるぐらいのガッツがないと厳しいと思います。俺は最初の3か月だけ語学学校に行ってたんですけど、語学学校にいるとあまり身につかないんですよ。MIに入ってからも1年間ぐらいは授業の内容がほぼわからなかったけど、わからない単語は全部調べたりしたし、アメリカ人の同級生とルームシェアすることになってからはそいつにいろいろ聞きまくりましたね。
― 大きな目標のためなら言葉の壁もガッツで乗り越えろと。
あと、日本人とつるみ過ぎないのも大事ですね。アジア系の人は固まりがちで、英語を話さなくなるんですよ。だから俺は意識的に避けてました。途中からはあまり気にしなくなりましたけど、できるだけ英語ができる人たちとつるむようにしてました。最初の頃は嫌なやつだと思われたかもしれないけど、せっかくアメリカに来たんだからというのもあるじゃないですか。もちろん、日本人の友だちもいたけどできるだけそこに留まらないようにしましたね。今はネットでなんでも調べられるし、翻訳もできるので、昔よりはやりやすいと思いますよ。
前編はこちら
Yas Nomura
2007年、14歳の時にギターを始める。
翌年、2008年、音楽専門高等学校、東京自由学園(現・東京自由学院)に進学し、テクニック、アンサンブル、音楽理論などを学ぶ。
2011年、高校を卒業後、1年間、ギタリスト菰口雄矢氏に師事。
翌年、2012年、19歳の時、アメリカ、ロサンゼルスに単身で移住、Musicians Institute Hollywood校に入学し、Allen Hinds、Scott Henderson、Dean Brownを始めとするLAのプロミュージシャンから音楽を学ぶ。2014年、MI在学中にベースを独学で弾き始める。
2014年にMIを卒業後、プロギタリスト/ベーシストとしてのキャリアをスタートさせる。2019年には自身のバンド、The Resonance Projectのファーストアルバムをリリース、同年にはギタリストとしてHyde (L’Arc-en-ciel)の全米ツアー(全35公演)にも参加。ベーシストとしてはMateus Asatoのサポートメンバーとして2019年のアジアツアーに参加。2022年11月にはThe Resonance ProjectのシングルとそのMVがリリース、来春にはニューアルバムをリリース予定と、今後の活動が注目されている。
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