GUS G. Special Interview(後編)
4月 12, 2022
Text by Daishi Ato / Translation by Kyoko Maruyama
ガスG.インタビュー後編は、Jacksonとの出会いからスタート。2016年という比較的最近の出会いから、どうやって関係性を築いていったのかが語られる。当然、オジー・オズボーン・バンドのオーディションのときのエピソードもたっぷり披露してもらった。有名な話ではあるけれど、こういうものは何度聞いても楽しいものである。
― Jacksonギターとの出会いは2016年なんですよね? どういうきっかけだったんでしょう?
A&Rのマイク・テンペスタはその前から知っていたんだけど、2016年頃の僕は変化を求めていたんだ。それで彼らと話しているうちに「何本かギターを送るから試してみて」と言われたのがきっかけ。契約とか関係なく、ね。何本かCustom Shopを作ってくれて、Coronaの工場に行ってチームに会って、そこでとても気が合ったんだ。もちろん、ギターもすごくよかったしね。
― Jacksonを使い始めて気づいたことはありますか?
それまでもJacksonの名前は知っていたけど、それほど弾いたことがなかったんだ。もちろんランディ・ローズモデルのような名器の存在は知ってたよ。僕にとって最初のエレクトリックであり、ずっと弾いてたのはフェンダー・ストラトキャスターだったから。そのよさを本当に知ったのはカスタムで作ってもらってからだね。Jacksonといえば、80年代のメタルシーンではスリムなネックが有名で人気もあったけど、僕は太いネックが好きなんだ。だから最初に言ったのは「細いネックは嫌いだ。フレットボードはぶっといのがいい」ということだった。トーンはそこで決まると思うからね。十分なウッドが必要なんだよ。その要望をしっかり聞いてもらえたのはよかったよ。伝説的ビルダーのマイク・シャノンと話をしながら作ったんだ。
― それでは、ガスさんのシグネイチャーモデルについて教えてください。
2016年にプロトタイプを作ったんだけど、それまでは違う会社で作ったStar-shaped ギターを何年も弾いていて、僕のトレードマークのようになっていたんだ。でもオリジナルのStarギターはFender/Jacksonの姉妹ブランドであるCharvelだった。なので、あの形のギターを弾き続けてアンバサダーになることが正しいように感じられたんだ。ちょっと変わった型破りなギターだけど、僕はとても気に入っている。
― なるほど。
それで2017年にまた別のプロトタイプを作った。最初の二つのStarモデルだよ。マットブラックとホワイトでピンストライプで縁取っている。自分的には最も気に入ってるギターだね。2020年にもう1本、そのあとにもう1本San Dimasシェイプを作ったけど、これは僕の「ストラト時代」の名残で、ストラト・スタイルのギターに戻って弾いてみようと思ったんだ。カラーはCandy Apple Red。とてもかっこいい見た目だよ。これまでローズウッド指板しか弾いたことがなかったから試してみようと思って、初めてメイプル指板にしてみた。明るいサウンドがとても気にいっている。リバース・タイプのヘッドストックもとてもクールだ。もう一つ、最新モデルで新しく試みたのは僕の会社で作ってるピックアップを搭載することだったんだ。Jacksonにその話を持ちかけたら、アーティストとそういうことを試すのは初めてだけどやってみようと快諾してもらえた。Blackfireという僕のブランドの中のImmortal― ― ハムバッカーで、セラミック・マグネット、パッシヴ・スタイル― ― のピックアップを搭載しているよ。他のStarギターはアクティヴ・ピックアップだ。
― Jacksonのギターの魅力はなんですか?
(しばらく考え)とにかく外観がクールじゃないか(笑)? 何よりも人目を引く。昔からそうだった。ヘヴィメタルというジャンルの同義語とも言える。ランディ・ローズから始まって、数多くのメタル・ギタリストが愛用してきた、まさにアイコンといえるデザイン。あとは当然ながら、サウンドとプレイアビリティも。そういったすべての要素が揃って、ただ見た目がいいだけでなく、音もよく、持った感触もいいギターになる。どれだけのギタリストが“お気に入りの武器”として選んでいるかを考えれば、言わずもがなだろう。僕も彼らと同じ理由で選んでいる。ギターは弾いた感触と出す音がすべてだからね。
― ガスさんにとって、Jacksonギターは他とどう違いますか?
すべてのギターは違うものだ。同じスペックでも違ってたりする。ギターごとにウッドも違えば、作る者の技巧も違う。ただ、僕にとってJacksonに意義があるのは、自分でデザインし、自分なりの印を残すチャンスがあったこと。そこが他との違いだし、だからこそシグネイチャーモデルなわけだ。もちろん他のギタリストにもそのよさを知ってもらいたいけど、何よりも僕自身のパーソナルなものでなきゃならない。その機会を与えてもらい、一緒に作ることができたからこそ、自分にとって最高のギターと呼べるギターができたのさ。
― 他のギタリストにも弾いてもらいたいとおっしゃいましたが、実際、Jacksonのギターはどんなプレイヤーにオススメしますか?
Jacksonがロックやメタルのギタリストの望みを満たすギターであることは歴史が証明しているわけで、Jackson Rhoadsを弾くジャズ・ギタリストっていうのはあまりお目にかからない。いたらおかしいだろうけどね(笑)。クラシック・ロックからヘヴィメタルまで、ロック、メタル系のギタリストになら誰にでもおすすめするよ。マルチスケール・ギター、7弦ギター……スタイルに関係なく、よりヘヴィなサウンドを求めるギタリストに向いていると思う。San DimasギターもStarギターもだけど、僕のギターを見て「ちょっと弾かせてくれ」と言う連中に「いいよ」って弾かせると、みんな「すごく楽に弾けて、突然上手くなる気がする」と驚くよ。見た目はロック/メタルだけど、実はどんなスタイルにも対応する用途の広いギターだ。ごく最近、クイーンズライチにいたマイク・ストーンが僕のSan Dimasをステージで弾いているのを見て、すごく光栄だったよ。
― これから楽器を始めるビギナーのみなさんへアドバイスをお願いします。
辛抱強くいることかな。すぐ結果が出るということはないけど、時間をかけてギターと過ごす時間を楽しめば仕事っていう気はしなくなる。音楽は楽しむべきだからね。弾きたいだけ弾き、楽しめるだけ楽しめ。すべてはそこから始まるんだと思う。ギターを弾くなら正しい理由のために弾け。正しい理由とは誰かにそう言われたからではなく、楽しむためだ。あとは練習を怠らないこと。練習は必ず違いを生むし、結果はついてくるものだからね。
― フェンダーが行った市場調査によると、ギターを弾き始めた人の9割は1年目で諦めてしまっているそうです。あなたがパッションを失わずにギターを弾き続けてこられた理由はなんだったと思いますか?
単に、ギターを弾くことで幸せを感じられた、それだけだよ。でも、最初は誰だって何かしらの音楽を聴いて「このスタイルが好きだ」と思うところから始まる。僕の場合、最初から「これが好きだ」とわかったので「どうすればそこに行けるのか、どうすれば自分でもそれを弾けるようになるか」だけを考えた。だから練習という気がしなかったんだ。
― なるほど。
諦めてしまう人の多くは、何時間も練習しなければならないことにやる気が失せるんだと思う。実際、時間はかかるからね。でも僕にはごく自然なことに思えたってことだね。あまりいいアドバイスにはならないね(苦笑)。でも、一つ言えるのは、ギターを弾くのに「イングヴェイ・マルムスティーンやマイケル・シェンカーみたいに弾けなきゃダメだ」と思う必要はない。知っているのは3つのコードだけだったとしても、それを弾いて楽しめるなら、楽器を弾くっていうのはそういうものだと思う。もし、もっと高いところにいる自分を思い描いているのだとしたら、それには違う種類の練習やコミットメントが必要となってくる。それにしたってすぐに結果は得られないよ。だからさっきも言ったけど、自分のやりたいのがどちらであったとしても、楽しめということ。プロセスを楽しむんだ。1日10分でも20分でも5時間でもいい。ルールはない。練習は誰もジャッジする人間がいないからね。
― ビギナーのギタリストにとっての初めてのギターにJacksonがなる可能性はあると思いますか?
ギターの価格は色々だからね。僕のモデルならJS ModelやX Seriesなどは初心者にぴったりだと思う。X Seriesは僕自身もよく弾くよ。かつて「いいギターには5千ドル払わなきゃならない」という時代もあったけど、今はもうそうじゃない。手頃な価格のギターでも素晴らしいものが多くある。Jacksonギターはどんなレベルのプレイヤーにも向いていると思う。プロだろうと、ギターを弾き始めたばかりのプレイヤーだろうとね。
― では、ガスさんのこれまでのキャリアで大きな分岐点を二つ挙げるとしたらいつですか?
まずは初めてレコード契約の話をもらったとき。ファイアーウィンドも他のプロジェクトも含め、自分が音楽業界に入ってその後に起きたことを考えると大きなターニングポイントだったね。二つ目は当然ながら、オジー・オズボーンとやるようになったこと。自分の人生もキャリアもそこで大きく変わったからね。
― オジーのオーディションはどういうものでしたか?
今になって思えばリラックスした雰囲気だったけど、僕は緊張していた。だってオジーのオーディションというと、建物の周りをぐるりと一周するくらいのギタリストがオーディションにやって来た、とかそんな話を雑誌で読んでたし(笑)、「どうせ5分くらいしか時間をもらえないんだろう」と思ってた。ところがそんなことはなくて、まずバンドと数時間リハをして、何度か曲を合わせたところにオジーが現れたんだ。ものすごくリラックスした感じで6曲くらいやった。それだけさ。オジーから「お前、すごく上手いな」と言ってもらったけど、気づくと僕はその場にひとりで残されて、彼とバンドは隣の部屋で話してた。「何を話してるんだ!?」とヤキモキしながら待ってたらオジーが出てきて、「ギグをやってみるか?」と言われたのさ。
― その場で採用が決まったんですね! その他にオーディションで印象に残ってるエピソードはありますか?
とにかく終始クールだったよ。飛行機で到着して、ホテルに直行して部屋に入った途端、電話が鳴ったんだ。そうしたらオジー本人だった。「明日のオーディションのことは心配するな。ミスってもいい。ロックンロールなんだからベストを尽くして楽しんでやれ」とこちらの緊張をほぐそうとしてくれたんだと思う。
― 先ほどの質問とカブるかもしれませんが、これまでのキャリアでガスさんがもっとも誇らしく感じた出来事は?
もう20年近くやっているから、いくつも個人的なハイライトと思える瞬間はあったよ。こうして日本の君たちと話しているから言うわけじゃないが、初めての日本もその一つだ。夢だったんだよ、日本は。スコーピオンズ『Tokyo Tapes』やディープ・パープル『Made In Japan』を聴いて、いつか自分も日本で演奏してみせると思い描いていたら、突然それが叶った。特別な思いがしたよ。以来、日本に行くたびにそう感じる。他には、初めて大きなフェスティバルに出たとき、ホームタウンの大きな会場をソールドアウトにしたとき、オジーのレコードで弾いたとき、マディソン・スクエア・ガーデンで演奏したとき……いくつもあるよ。
― 想像していた日本に劣ることはなかった?
一度もなかったよ。むしろ、それ以上だった。日本には15回くらい行っているけど、どのライヴも忘れ難いよ。ホスピタリティも、東京大阪間の新幹線も(笑)、和食も最高だ。友人も大勢できたしね。日本といえばおかしい話があってね。まだ若い頃、初めて肩に彫ったタトゥーが日本語のFire、つまり「火」という漢字だった。それを見た日本人から笑われて。なぜ笑うんだと聞いたら、「火というと消火器みたいだ」と言われたんだよ。その国の人がどう感じるか、わからないものだね。それで下にWind=風も入れたんだ。「Firewind」にすれば、消火器にはならないだろうから!
― この記事をきっかけにガスさんの音楽に初めて触れる若いリスナーにオススメするとしたらどの楽曲、またはアルバムになりますか?
ソロ・アルバムなら最新アルバム『Quantum Leap』を勧めるよ。全曲インストゥルメンタルで僕のスタイルを深く知りたいと思うならこれを聴いてもらうのがいい。今まで作った中では最も表現力に富む1枚なので、ガスG.のサウンドが一番わかると思う。ファイアーウィンドも何枚もアルバムを出しているし、時期によってシンガーが違うので1枚を選ぶのは大変だけど、最新作『Firewind』には過去の時代の要素がすべて含まれていると思う。その前に出した『Immortals』もなかなかいいアルバムだと思う……あ、3枚も挙げちゃったね。
― 大丈夫ですよ(笑)。ミュージシャンは最新作が当然一番好きですよね。
ああ、かなり自信は持ってるよ。初期のアルバムももちろん好きなんだけど。やはり最新作はミュージシャンにとっての、精神的、音楽的な現在地なのだろうね。
― ガスさんが理想とするミュージシャン人生はどういうものですか?
ありがたいことにすでにそんな人生を送れている。ごく初期の頃から音楽で暮らしてこれた。色々な変化はあったけど、その間もずっとサポートしてくれる素晴らしいファンが世界中にできた。20年間、プロとしてやってきていると考えると信じられない気持ちだよ。時々、まだ自分は出てきたばかりの新人なんじゃないかと思うこともあるけど、実際はそんなことはなく、確実に歳をとってるわけで(笑)。それでも自分の夢を生きていられることはとても恵まれていると思うし、正直、夢以上さ。オジー・オズボーンとプレイする自分は夢にも思っていなかった。ギタリストで「オジーとやった」と言える人間はそう何人もいないわけだから、まさに恵まれた理想の人生だし、願った夢はすべて叶っているよ。いい人生さ。これがずっと続くことを願いたいね。やめる気は一切ないよ。
前編はこちら
ガスG.
本名:コンスタンティノス・カラミトロウディス。1998年にファイアーウィンドを結成し、活動を始める。 2009年8月にオジー・オズボーンに見出され、2017年の春まで彼のバンドでリードギタリストを担当。オジーのバンドのギタリストとして活躍する一方、12枚以上のスタジオアルバムを発表し、ソロアーティストとしても高い評価を得る。アーチ・エネミー、ドリーム・イーヴル、そして彼自身のバンドであるファイアーウィンドなど、様々なアーティストと共に世界各地をツアーする。ファイアーウィンドは、2017年初めに8枚目のスタジオアルバム『Immortals』をリリースし、ギリシャを拠点とするバンドとして、世界のアルバムチャートにランクインした。
https://twitter.com/gusgofficial
https://www.instagram.com/gusgofficial/
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