命(-真天地開闢集団-ジグザグ)SPECIAL INTERVIEW -後編-

11月 3, 2023

 

10月4日にアルバム『慈愚挫愚 四 -最高-』をリリースし、11月に開催される全国ホールツアー〈全国開闢禊-最高- (ぜんこくかいびゃくみそぎ -さいこう-)〉のチケットは各地でソールドアウトを連発。現在のこの状況をヴォーカルの命はどのように捉えているのだろうか。そして、新しいギター「American Series Virtuoso」を手にしながら抱いている想いとは。

 

American Series Virtuosoは)“練習して上手くなりたい!”と思わせてくれるギター

 

― 10月4日にアルバム『慈愚挫愚 四 -最高-』がリリースされましたが、本来の自分が自然と表れた1枚になったという印象があるようですね?

はい。“ジャンル問わず”というスタイルだった中学の頃みたいです。あの頃もフォークデュオと言いつつ、フォークでも何でもない曲ばかりやっていたので。

 

― 今までのアルバムタイトルもその時のバンドの状況が反映されていましたが、今回はドラムの影丸さんの一言で決まったんですよね?

そうなんです。“最高!”って言ったのをそのまま採用しました。最初のアルバムが『大殺界』でしたから、この短期間で『最高』になれるとは思っていなかったです(笑)。

 

― (笑)。「Sha. La. La.」は良い曲ですね。10年くらい前からある曲だと聞いています。

上京した頃に作った曲です。

 

― 夢を諦めそうになった体験がある人の心に、とても響く曲だと思います。当時の命さんにも、そういう葛藤があったんですか?

僕はそういうのは一切なかったです(笑)。そういう体験をする世界線の自分を想像して歌詞を書きました。夢が叶うのって大変なことですし、今みたいな状況になれなかった自分を想像することもありますから。想像をすることで、“今のこの状況を大切にせなあかんな”と思いました。

 

― 「Dazzling Secret」は今年の夏フェスで盛り上がっていましたね。

はい。これはめちゃくちゃフェス映えします。大合唱してもらえる風景を思い描いて作っていたんですけど、実際に形になった時に想定の10倍くらいの感じで“めっちゃいいやん!”って思いました。

 

― 「生きて」のように和的な要素が入った曲は、初期からある作風の一つですよね?

そうですね。最近はさり気なく和を入れることが多いです。EDMとかのダンスミュージックに、琴などのジャパニーズ音階を入れるのが流行ったことがありますけど、全然違うジャンルの音楽に和やエスニックの要素が入っていたりするのはめっちゃ好きなんですよね。北欧メタルもヨーロッパ民謡の楽器の音が入っていたりしましたし、そういうのをジャパニーズバージョンでやっているような感じですかね。

 

― 日本人ならではのオリジナリティを、自然に表現できるやり方でもあるんでしょうね。

そうなんだと思います。メタルなサウンドの音楽って、どうしても何かと似るところがあるので、和の楽器を入れることによって独特なものになるんです。例えば「ゴミはゴミ箱へ」という昔の曲はスリップノットみたいな感じですけど、三味線の音が入ることによってかなりカオスな感じになりました。そういうのが面白いんですよね。

 

― ジグザグの曲は歌詞も素敵です。今回のアルバムの曲から挙げると、「生きて」は心にとても響くものがあります。

ありがとうございます。これはリスナーに対してのものであると同時に、未来の自分に向けたところもあります。未来のリスナーと自分が“生きてきて良かった”と思ってほしいということですね。

 

― この曲や「Mr. Idiot」「最高だZ」「Stay with me」もそうですが、理不尽な現実に屈しないで生き抜く姿を、さまざまな形で描いているアルバムにもなっていると思います。

そうですね。前向きなアルバムです。こういうのを今まで避けていた部分もあったのかもしれないです。ストレートにこういうことを歌うと説教臭くなったり、子供っぽくなるような気もしていたので。だから、ある意味大人になったんだと思います。

 

― こういう曲の合間でユーモアを利かせた曲が存在感を発揮するのもジグザグならではです。1曲目の「おっかちゃん」はなかなかぶっ飛んでいますね。

これが1曲目だから、その後を聴くのをやめてしまう人もいるかも(笑)。この曲は完全におふざけです。

 

― 充実のアルバムも完成してとても良い状況ですが、今後はどのようになっていきたいとイメージしていますか?

実は今、本当に悩んでいます。“俺は何をしたいんだろう?”と。もっと大きくなっていきたい気持ちがある一方で、“大変やなぁ…”と思う自分もいて(笑)。期待されることへのしんどさもあるし。武道館が成功してホールツアーもできるようになって、それはほんまにハッピーなことですよ。めちゃくちゃ順調なんですけど、たまに魔が差すというか。“1回思いっきりコケへんかな?”“動員が500人以下とかになれへんかな?”と思ってしまう自分もいて(笑)。そっちのほうが気楽かもしれないと思ったりもするので。

 

Mikoto Sub 2

 

― 良い活動状況になるまでには、紆余曲折がありましたよね?

そうですね。何年か前にメンバーが脱退したタイミングで1回“もうええわ”ってなったんです。ライヴの動員も3分の1以下になって“もう無理やな”と。とはいえ、一生音楽をやると思ってはいたので、“売れへんでもええわ。地道にやりたい音楽をやって20周年記念とかの時に1000人規模くらいのライヴができたら、それでええんちゃうか?”っていう気持ちになったんです。その矢先に動員が増えて、あれよあれよという間に武道館に立ったので、自分の気持ちとバンドのピークとの間のズレみたいなものがあります。予定の10倍くらいの速度で加速しちゃったので、予定を何も考えていなかったというか。もちろん今のこの状況はありがたいことなんですけど。

 

― 命さんはもともと表に出て活動するというよりもクリエイター指向が強い人だから、今おっしゃったような悩みが生まれているのかもしれないですよ。

そうですね。将来の夢は裏方みたいなことでしたし、工作とかが好きだった子供なので。でも、表舞台に立ってこれだけの皆さんが応援してくださるということは、向いてはいたんだろうなと思うんです。向いていることは仕事にしたほうが絶対にいいし、楽しいのは確かです。だからやっていくべきだし、“やりたい”っていう気持ちはあるんです。ただ、本来の性格は誰にも見られていない場所で黙々と何かに没頭するタイプなので、表舞台が忙しくなり過ぎるとそういうことに集中できなくなるんですよね。

 

― 11月から始まるツアーは、チケットが完売した公演がかなりありますね。

ありがたいことですね。このツアーはトータルで過去最大規模です。ホールツアーができるようになったのは本当に嬉しいです。ホールだとバンドキッズ系じゃないお客さんも来やすいじゃないですか? 幅広いお客さんに見てもらいやすいのが嬉しいです。自分が本来やりたいのもそっちというか。やっぱり音楽が好きでやっているし、自分が作った作品をいろいろな方に聴いていただきたいのが一番大きいので。

 

― 命さんに憧れてギターを始めようと思う人もたくさんいると思うのですが、何かアドバイスはありますか?

こっち系のジャンルですから、厳しい言葉になっちゃいますよね。“練習しろ!”しかないのかも(笑)。

 

― (笑)。カッコ良くて、持っているとテンションが上がるギターを愛用すると練習に身が入るのは確実にあると思います。

そうですね。気に入ったギターを使うのは、モチベーションを上げることにつながりますから。憧れのアーティストが使っているのと、同じギターで練習するのがいいんじゃないですか? 僕、このジャクソンを使いますので。改めてこのギターで練習したいと思います。これは“練習して上手くなりたい!”と思わせてくれるギターですよ。

 

Mikoto Prod

 


 

-真天地開闘集団-ジグザグの唄担当。メンバーは龍矢(Ba)、影丸(Dr)。2016年1月31日より本格始動。2022年11月、初の日本武道館公演を開催。近年は大型フェスにも積極的に出演し、着実にファンを増やし続けている。10月4日に、第四完全音源集(アルバム)『慈愚挫愚 四 -最高-』をリリース。11月からは過去最大規模となる全国ホールツアー〈全国開闢禊-最高- (ぜんこくかいびゃくみそぎ -さいこう-)〉を開催する。

-真天地開闢集団-ジグザグOfficial Web

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