Marty Friedman Special Interview (前編)
9月 7, 2023

10代の頃、プロミュージシャンを志していた頃になけなしの金をはたいて手に入れたジャクソンギター。プロフェッショナルな現場で求められる要素すべてを持ち合わせた相棒を入手して以降、マーティ・フリードマンの傍らにはいつもジャクソンギターがいた。今回のインタビューでは、改めてギターを始めたきかっけやジャクソンギターとの出会いを聞きつつ、新製品であるAmerican Series Virtuosoのインプレッションについてたっぷりと話を聞いた。
― まずは、ギターを始めたきっかけを教えてください。
子供の頃に観たキッスのライヴが人生の転機でした。僕はどちらかと言うとスポーツが好きで、スポーツがやりたかったんです。下手ではないけど、この体だとアメフトをやったら半端なく殺されると思ったし、向いていないのは明らかだったので諦めました。そんな時にキッスのライヴに行って、彼らのステージを観た瞬間に“これしかない”と思って次の日にギターを買いました。
― その時点でプロになると決めたのですか?
プロというか、音楽しかないって。とにかくこの世界でやっていきたい、その日からモチベーションになりましたね。ただ、諦めなければ何とかなると思っていました。スポーツは冷静に考えたら、いくら頑張ってもできないかもしれない。でも音楽だったら、やめずに続けていけば、そのうちいろいろと達成できるんじゃないの?って。音楽には引退もないし、不正解もなくどれも正解なので。
― どんな練習をされたんですか?
部屋にこもっての練習派ではなく、バンドを組んでライヴをやる派でした。ライヴをやるにはリハを含めて練習がたくさん必要で、リハは一日中やったりするので、自然とスキルが磨かれていきました。コード練習より、バンド活動とか、レコーディングの準備とか、ライヴの準備を最初の頃から一生懸命やりました。
― マーティさんのピッキングってオリジナルだと思うのですが、その頃からそういう弾き方だったのですか?
昔のビデオを見たら、その頃からやっていましたね。まったく意識していないです。ある程度有名になって取材を受けると、必ずピッキングのことを言われるのですが、“あ、そうなんだ”って感じで全然気づいていなかったです。ちゃんとしたピッキングフォームを教えてもらっていなくて、そういうのはどうでもいいやって思ってた。そもそも、ちゃんとしたフォームなんてないって。とにかく僕の好きな音が出せるならそれでいいと思っていたので、そうなっていったんですね。
― ジャクソンギターとの出会いは?
インディーズで数枚レコードを出していた時、ジャクソンがちょっと話題になっていて。ヘヴィメタルだったらこのギターがダントツに良いっていう評判で。僕、ハワイに住んでいたからすぐに手に入らなくて、注文して取り寄せた気がする。当時は1300ドルなんですけど、ホームレス紙一重だったのに手に入れました(笑)。とにかく、世界でベストの楽器が欲しくて仕方がなかったから。実際に弾いてみたら、やっぱりダントツにベストでしたね。ジャクソンの前はいろいろなギターを弾いていたけど、ジャクソンは勝負にならないぐらい違いましたね。プロはこれだって実感しました。値段は倍ぐらいでしたけどね。
― 何が一番違うんですか?
みんなご存じだと思うけど、僕はそんなにスペックの話はできない。でも触ったらガチッとしっかりしているし、どれだけ激しく弾いてもチューニングが崩れないし音もいい。どれだけ攻撃的に弾いてもちゃんと対応できる。ツマミが繊細だとか、ネックがバズったりするとか、プチ問題は一切なくて。ちゃんとした仕事道具が手に入ったなって思った。もっといい説明ができなくて申し訳ない。
― まさに激しいロックを弾くにはぴったりということですね。
そうですね。あとはデザインも良かったです。エクスプローラーシェイプだったので、ジャクソンのヘッドストックのほうがメタルって感じ。今では当たり前なんだけど、当時はすごく印象的で、衝撃的なデザインでした。誰も持っていないし。
― ハワイで持っていたらそれだけでヒーロー?
ヒーローになりました。“あいつお金持ちじゃん”って感じでしたよ。
― さて、新製品American Series Virtuosoの話を聞いていきたいと思いますが、シリーズ名の“ヴァーチュオーゾ”はネイティブの方からするとどんなイメージですか?
ヴァーチュオーゾの本当の意味は“天才的な演奏者”。昔からクラシックの世界でよく使われていた言葉です。僕もよく言われる言葉なのですが、Virtuosoってベートーベンみたいな意味なので褒めてくれる気持ちはありがたいんですけど、ちょっとだけ恥ずかしいです。ヴァーチュアスは英語でgoodという意味です。いい人、天使みたいなっていう意味。ヴァーチュオーゾの語源はイタリア語で、classical musicianとか名人という意味。ジャクソンはヴァーチュオーゾ系ですね。演奏がアンビシャスだったり、モチベーションのある冒険的な演奏者が弾くメーカー。ジャクソンは本当に冒険的な演奏に対応できるので。
― American Series Virtuosoの動画にマーティさんは出演なさってますが、その経緯を教えてください。
アメリカのジャクソン本社から連絡をもらって、7月にアメリカへ行ってビデオを撮りました。本当に衝撃的で革命的なプロジェクトです。ギターメーカーの中で、このようなプロジェクトを見たことがないです。撮影スタジオも本当に映画のようでした。内容も細部までものすごくこだわりました。曲と、演奏の部分と、プロデュースと、ミックスダウンとかパート分けとか、みんなすごく集中していました。参加している5人、一人ひとりを認識できるような、それぞれのスタイルを引き出すような曲ですね。ただみんな同じオケの上で演奏して、自分の演奏を見せるだけじゃないんです。フルビデオを見たら、これまで見たことのないような内容です。
― 曲は誰が作ったのですか?
ミーシャ(ミーシャ・マンソー)が、僕ら一人ひとりとやり取りしながら作っていった。そこがポイントですよ。こういうデモ演奏は適当なバッキングトラックの上で演奏するのが普通です。音の確認をするためにはそれで全然いいんですよ。でもこれは、それぞれのアーティストとしての個性があることを楽器会社が認めてくれて、そして引き出してくれたのが画期的です。
― 撮影の時は全員来たんですか?
全員ずっと一緒にいました。これは合成じゃない、リアルです。
― American Series Virtuosoを演奏してみていかがでしたか?
ビデオ撮影の時は、ライヴと同じように、時にはライヴよりさらに激しく弾くんですね。だからギターがどう対応してくれるのか無意識に判断するんです。僕にとってチューニングはかなり大事ですが、チューニングが全然崩れない。激しく弾いたり、ジャンプしたり、バットみたいに投げても、かなり丈夫な仕事道具のように感じました。
― 撮影の時もアフレコではなく実際に弾いているということですか?
はい。他のメンバーと一緒にいっぱいジャムったし。もう一目惚れというか、第一印象は僕の最初のジャクソンと同じように、“これぞプロクラスの楽器だな”と思いましたね。仕事道具としてちゃんと使えると思いました。
― ネックの弾き心地は?
それも僕は信じられないほど鈍いので、ネックはどれでもOKなんです。まったくこだわらないです。違いがわからないから“いいじゃん!”としか言えない(笑)。良くなければもちろん何か言いますよ。ここが嫌だとか。
― American Series Virtuosoはダメなところが一つもなかったと?
ないですね。僕はそんなにアーミングをしないのですが、American Series Virtuosoでアーミングを撮ったんです。普通のアーミングセットアップではチューニングが狂いやすいので、いつも心配するんですけど、一切チューニングの問題がなかった。つまりアーミングがあってもなくても、チューニングが安定しているなと感じましたね。
― American Series Virtuosoにはセイモアダンカンのハムバッカーが載っていますね。
僕の全部のシグネイチャーギターには、自分モデルのEMGピックアップがついているんですけど、このAmerican Series Virtuosoはそのままの状態で弾いたんです。音は僕のギターと変わらないと思ったので、もしライヴで弾くんだったら自分のピックアップじゃなくてもこのままでもいい。ヘヴィな音だけじゃなくて、ネックピックアップ一つとっても、音量を絞っても幅広い音が出せるから。メタルだけじゃない。このピックアップはトップクラスだと思う。
― ライヴで使うとしたらどんな曲で使いたいですか?
僕はそんなこだわりはないです。チューニングが違うから別の楽器に持ち替えるとか、このギターはこの曲に向いているとか向いていないとか、そういうことじゃない。どんな曲にも向いていないと使いたくない。そんな狭い使い方しかできないギターはいらない。オールマイティに対応できるギターが欲しいんです。
― American Series Virtuosoはそれに応えてくれると。
もちろんそういうことですね。
― ボディは小さめで、色はSatin Black、Shell Pink、Mystic Blue、Specific Oceanの4色があります。
ピンクと聞くとゴリゴリのメタルの色じゃないって思うんですけど、ミーシャが弾いても全然違和感がない。むしろ新しい次元で、音とのギャップの面白さが伝わると思います。こういう色が無難だと思いますね。どんなレベルの演奏者にも合いそうです。
― ピンクはすごく新しい感じですよね。
僕は楽器をアクセサリーだと思っていますね。研ぎ澄ますとアクセサリーの感覚です。実際にギターを持って鏡を見て、アクセサリーとしてどうかを見ます。僕は“この色はNG”とか一切ないから。実際に持たないとわからないですけど、どれも素敵な色だなって思います。
後編に続く(近日公開予定)
【プロフィール】
マーティ・フリードマン
アメリカでの音楽活動を経て、2004年に活動の拠点を日本・東京へと移す。 2005年からテレビ東京で放送された伝説のロックバラエティ番組『ヘビメタさん』にレギュラー出演し、日本国内のヘヴィメタルファンだけではなくYouTubeを通じて世界のヘヴィメタルファンを驚かせた。続編レギュラー番組『ROCK FUJIYAMA』は世界各国で話題の番組となる。 その後、テレビ番組に多数出演。雑誌や新聞でも連載を持ち、初の執筆書籍『い~じゃん! J-POP だから僕は日本にやって来た』はベストセラーに。2008年には映画『グーグーだって猫である』『デトロイト・メタル・シティ』にも出演。ギタリスト、作曲家、プロデューサーだけにとどまらず、テレビ、ラジオ、CM、映画などさまざまな分野で活躍している。
ROCK FUJIYAMAチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCLmF8nkHDUap8ztsGnROWqg
Marty Friedman Official YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC8p0ZqjT7f_zZiS-py5w-WQ
Marty Friedman OfficialWeb
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