GUS G. SPECIAL INTERVIEW(後編)

6月 18, 2024

 

ガスG.のインタビュー後編。前編に引き続き、シグネイチャーモデルについての紹介のあと、ファイアーウインドの最新アルバム『スタンド・ユナイテッド』が生まれた背景も語ってもらった。彼の圧倒的な演奏スキルと表現力の源は、“ギターが好き!音楽って素晴らしい!”というピュアな想いであることが伝わるインタビューとなっている。

 

ギターはいつでも僕のインスピレーションの源

 

― 市販されているガスG.さんのシグネイチャーモデルは現在二つありますね。Gus G.StarGus G.San Dimasはどのようなプレイヤーに合っていると思いますか?

Starは尖ったシェイプをしているから、ヘヴィメタルをプレイするギターにぴったりだろうね。San Dimasは幅広いロックにフィットすると思う。でも、さすがにジャズのギタリストがSan Dimasを弾いたら変な感じなのかな(笑)? どちらのモデルも、メタルバンドのギタリストが弾いていたら超クールだよ。

 

Starは個性的な形状ですが、弾きやすいですよね。

そうなんだよ。僕にとっては、もはや身体の一部と言っても過言ではない。ボディが身体にすごくフィットするし、腕を乗せやすいから、この形状じゃないと変な感じがして落ち着かない(笑)。他の人にこのギターを弾いてもらっても、同じような印象みたいだよ。膝に乗せた時も安定感があって弾きやすい。

 

― ユニークなシェイプのギターは弾きにくいことがあるけど、細部まで丁寧に考えられているんですね。

その通り。ボディの裏側も何度か試しながら、理想的な形に近づけていった。ネックの根元の部分も削って、24フレットまでスムーズに弾けるようになっているよ。僕のStarは、ギタリストの求めているプレイを100%引き出してくれるギターだ。

 

3月にリリースされたファイアーウインドの最新アルバム『スタンド・ユナイテッド』も、ガスG.さんの素晴らしいプレイが満載の作品です。

ありがとう。ファイアーウインドはファンタジーを描くのではなくて、実際の世界からインスピレーションを受けながら活動してきたバンドなんだ。今回もストーリーを語るコンセプトアルバムではなくて、現実を反映した作品になったと思う。今、この世界で起きていることはもちろん、人類の頭の中にあることも反映されているアルバムだね。人間の中には善と悪があって、善が愛となる一方で、悪が戦争に繋がったりもする。そういうことが各曲で描かれている。

 

― そういう曲が生まれた背景は、何だと感じていますか?

やっぱり大きいのは、この5年くらいの世界の情勢だね。パンデミック、物価の高騰、戦争とか、いろいろなことが起き続けるクレイジーな時代に突入していて、そういう中で感じてきたことが『スタンド・ユナイテッド』には反映されたんだと思う。

 

― ガスG.さんが素晴らしいメロディメイカーであることも示されている作品です。

そう言ってもらえて嬉しいね。メロディは僕の内面から湧き出てくるものなんだ。音符を組み合わせればメロディになって、そのコンビネーションは膨大な数があるけど、曲を書く度にそのスウィートスポットを全力で探している感じなのかな? それが僕のソングライティングだ。みんなの心を震わせることができるメロディになることを、いつも願っている。独創的であるのを目指すのではなくて、言いたいことを表現してくれて、感情を乗せることができるメロディを追求しているんだ。それを探す旅は、終わることがない。ギターを弾く度に、そういうメロディを見つけられたらいいなぁと思いながら曲を作っているよ。

 

― 曲のインスピレーションをお気に入りのギターが与えてくれることも、度々あるんじゃないですか?

その通りだね。ギターはいつでも僕のインスピレーションの源だから。今作っているプロトタイプからも新しい曲が生まれていくだろうね。どんな曲が生まれるのか、僕自身も楽しみにしているよ。

 

Gus G Special 2024 5

 

― ファイアーウインドは5月に来日ライヴを行いました。今後のスケジュールに関して、何か決まっていることはありますか?

今のところ、日本での次のライヴの予定はまだ決まっていないんだ。数えてみたら、僕はこれまでに16回も日本に来ているんだよ。初めて来たのが2002年だから22年間で16回。もともとはスタジオプロジェクトのバンドだったファイアーウインドが初めてのライヴをやった場所でもあるから、そういう点でも特別な想いがあるのが日本だ。機会さえあれば、また戻ってきたい。ギタークリニックとかもできたら楽しいだろうね。

 

― ファイアーウインドが来日する度に“あんな風にギターを弾いてみたい!”と思ってギターを始める人もいると思います。

そうだったら嬉しい。音楽を学ぶ上でも、初めて手にする楽器という点でもギターをおすすめしたい。僕に言わせれば、ギターは世界一の楽器なんだから。弦を弾くことで、たくさんの感情表現ができるのが楽しくて仕方ない。始めるのは何歳からだって遅くはない。年齢制限なんてないんだから。音楽って本当に素晴らしいよ。僕自身も音楽に救われて、たくさんの素晴らしい経験をしてきたからね。ピーター・フランプトンが僕にとってのきっかけとなったように、僕のプレイが誰かのきっかけになったのだったら、“やれよ!”という言葉を贈りたい。プロにならなくたっていいんだから、ギターを弾くことを心から楽しんでほしい。

 

― 初心者にも、ガスG.さんのプレイをお手本にすることをおすすめしたいです。ガスG.さんのプレイを日本のギター雑誌が紹介している動画を観たんですけど、「完璧なフォームだ。素晴らしいお手本! 彼はパーティに明け暮れるのではなくて、真面目に練習してきたんだと思う」というようなことが語られていました。

とてもありがたいね。練習は今でもたくさんしているよ。特にレコーディング前とツアー前はいっぱい練習する。普段でも、10分とかちょっとした時間があったらギターを弾くし、それは完全に僕の習慣。でも、いつもギターばかり弾いているわけではないんだよ。息抜きをすることだってあるんだから。とはいえ、ギターを仕事として意識はしていなくて、弾くこと自体がリラックスになっているのかな? ギターに数日触らないと、何か調子がおかしくなるから。

 

― 良いプレイをする上で、大切なのは何だと思いますか?

リズムだね。これはギターを始めたばかりの人にもぜひ知ってほしい。どんなに速く弾けたとしても、リズムが悪かったら何の意味もない。ビギナーのみんなも、メトロノームを使いながら練習するのをぜひ心がけてほしいな。

 

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(左)AMERICAN SERIES VIRTUOSO, STREAKED EBONY FINGERBOARD, MYSTIC BLUE

(右)GUS G. STAR

 


 

ガスG.

1998年にファイアーウィンドを結成し、活動を始める。 2009年8月にオジー・オズボーンに見出され、2017年の春まで彼のバンドでリードギタリストを担当。オジーのバンドのギタリストとして活躍する一方、12枚以上のスタジオアルバムを発表し、ソロアーティストとしても高い評価を得る。アーチ・エネミー、ドリーム・イーヴル、そして彼自身のバンドであるファイアーウィンドなど、さまざまなアーティストとともに世界各地をツアーする。ファイアーウィンドは、2017年初めに8枚目のスタジオアルバム『Immortals』をリリースし、ギリシャを拠点とするバンドとして世界のアルバムチャートにランクイン。2024年3月1日にニューアルバム『スタンド・ユナイテッド』をリリース。

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