GUS G. SPECIAL INTERVIEW(前編)

6月 11, 2024

 

オジー・オズボーン・バンドのギタリストに抜擢され、様々なバンドのレコーディングやライヴでも活躍しているギリシャ出身のギタリスト・ガスG.。自身のバンドであるファイアーウインドの最新アルバム『スタンド・ユナイテッド』は、ドラマチック、メロディアス、エネルギッシュなプレイが満載の作品となった。世界中からの熱い眼差しを集める彼の圧倒的なプレイは、どのように育まれたのだろうか? そして、愛用しているジャクソンのシグネイチャーモデルの魅力とは?

 

ジャクソンは伝統のあるギターの家系図の中にある

 

― 子供の頃からギリシャの伝統的な音楽に触れる機会があったそうですね。

うん。僕の父は教師なんだけどセミプロのシンガーで、時々結婚式とかでギリシャの伝統音楽の曲を歌っていたんだ。だから、ブズーキの演奏が入っているような曲を家で聴く機会はよくあったね。あと、幸運なことに僕の家には父のコレクションのロックの名盤レコードがたくさんあったので、それもよく聴いていたよ。

 

― ギリシャのロックですか?

いや。聴いていたのは“リアルロック”。リアルロックっていう言い方をするのもどうかと思うけど(笑)。イーグルス、サンタナ、ピンク・フロイドとか、イギリスやアメリカのロックを聴いていたね。

 

― ガスG.さんがギターに興味を持ったきっかけはユニークですね。ピーター・フランプトンの『フランプトン・カムズ・アライヴ!』を9歳の時に聴いて、トークボックスに興味を持ったんですよね?

うん(笑)。ロボットがメロディを歌っているみたいだったから。ピーター・フランプトンがギターを持っている写真もカッコ良くて、“これが自分がやるべきことなのかも”という啓示を受けたような気もした。特に衝撃的だったのは「Do You Feel Like We Do」という10分以上の曲。あれが決定的で、父に“ギターをやりたい”って言ったんだ。最初は聞き流されていたけど本気だとわかってくれて、10歳くらいからレッスンを受けるようになった。

 

― ガットギターから始めたんですよね?

うん。日本ではそうなのかはわからないけど、ギリシャでは“子供はクラシックから音楽を始めたほうが良い”という考え方が主流なんだ。僕の考えでは、それは間違いなんだけど。だから、僕が最初に練習したのはガットギター。頭の中ではガンズ・アンド・ローゼズやメタリカとかのエレキギターのサウンドが鳴っていたけど、4年間我慢したよ(笑)。エレキギターを初めて手にしたのは14歳の時。フェンダーのStratocasterだった。

 

― どのようなStratocasterだったんですか?

1990年代に販売されていたモデルで、仕様が珍しいんだよ。おそらく短期間しか製造されていなかったんだと思う。ブリッジがフロイドローズで、フロントとセンターがシングルコイル、リアがハムバッカー。ボディのカラーはサンバースト。リッチー・サンボラのモデルに近い感じかな? なかなか良い値段だったんだけど、“安いのを買っても後で買い替えることになるから”と、父が4年間節約して貯めたお金で買ってくれた。ずっと愛用して、ファイアーウインドの最初のアルバムのレコーディングでも弾いたよ。

 

Gus G Special 2024 2

 

2016年からジャクソンのギターを弾いていますね。

うん。LAのA&Rのマイク・テンペスタが“君にギターを送るから使ってみてよ”と言ってくれて、それがものすごく良かったんだ。その後、コロナにある工場に行って、ランディ・ローズのギターとかを手掛けた伝説のギタービルダー、マイク・シャノンと話し合いながら作ったのが、僕の最初のジャクソンのギターだ。チームもギターも最高のコンビネーションの出会いだった。実はその時、2016年に限定60本が販売されたゲイリー・ムーア・モデルのStratocasterも付けてくれて(笑)。Fiesta Redの素晴らしいギターだよ。僕はゲイリー・ムーアのファンだから、ものすごく嬉しかった。

 

― ジャクソンのギターの魅力はどのようなところにあると感じていますか?

ジャクソンはフェンダーの傘下だけど、伝統のあるギターの家系図の中にあるんだよね。高品質なギターを作り続けているジャクソンからシグネイチャーモデルを出すことができているのは、本当に光栄なことだと思っている。プレイアビリティも最高で、細部までこだわり抜かれているのがジャクソンだ。あと、製造に携わっている人々の素晴らしさも、僕はいつも感じている。作っている人たちとプレイヤーである僕らのゴールが一緒なんだ。これまで作ってきたシグネイチャーモデルの一つ一つに僕は満足してきたし、とても幸福な体験を重ねることができているよ。

 

― ガスG.さんのオリジナルモデルと言えばSan DimasシェイプとStarギターですね。Starギターは、プロトタイプの製作が現在進行中だとお聞きしています。今、そこにある黒いギターがプロトタイプですよね?

うん。基本的には前のモデルを踏襲しているんだけど、いくつか変更点も試しているのがこのギターだね。

 

― ブリッジがフロイドローズになったんですね。他にはどんな変更点がありますか?

ピックアップをダイレクトマウントにした。それによって音が少しブライトになったと思う。指板がローズウッドになったのも変更点。前のStarギターはパーフェローだったからね。

 

― 搭載されているピックアップは、ガスG.さんの会社・Blackfireのピックアップですか?

そうだよ。僕が自分でコイルを巻いて作っているわけではないけど(笑)。約4年前にサイドビジネスとして始めたんだ。

 

Blackfireのピックアップは、以前からシグネイチャーモデルに搭載していますよね?

うん。“僕のギターに搭載したい”とジャクソンに提案したら、“そういうのは初めての試みだけど面白いね。ぜひやってみようよ”ということになったんだ。自分のギターに自分のやっている会社のピックアップを搭載するって、なかなかないことだと思う。僕の提案を受け入れてくれたジャクソンに感謝している。よりパーソナルなギターになったね。

 

― プロトタイプのサウンドは、どのようなニュアンスですか?

このプロトタイプに載せているのはアクティヴピックアップで、マグネットはアルニコV。高出力で、ラウドなサウンドのキャラクターだよ。ヘヴィメタルにぴったりだし、僕のイメージそのものらしい。このギターを弾いた人は“まさに君の音だね”と言ってくれるから(笑)。

 

Gus G Special 2024 3

(左)AMERICAN SERIES VIRTUOSO, STREAKED EBONY FINGERBOARD, MYSTIC BLUE

(右)GUS G. STAR

 


 

ガスG.

1998年にファイアーウィンドを結成し、活動を始める。 2009年8月にオジー・オズボーンに見出され、2017年の春まで彼のバンドでリードギタリストを担当。オジーのバンドのギタリストとして活躍する一方、12枚以上のスタジオアルバムを発表し、ソロアーティストとしても高い評価を得る。アーチ・エネミー、ドリーム・イーヴル、そして彼自身のバンドであるファイアーウィンドなど、さまざまなアーティストとともに世界各地をツアーする。ファイアーウィンドは、2017年初めに8枚目のスタジオアルバム『Immortals』をリリースし、ギリシャを拠点とするバンドとして世界のアルバムチャートにランクイン。2024年3月1日にニューアルバム『スタンド・ユナイテッド』をリリース。

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