MARTY FRIEDMAN × Rie a.k.a. Suzaku Special Interview(後編)

5月 11, 2022

Photo by Mitsuru Nishimura / Text by Daishi Ato

マーティ・フリードマンとRie a.k.a. Suzakuによる対談後編は、Rieのギター練習法から始まる。さらに、“女性は男性ほどモテたいと思っていないからギターを弾かない”という独自の見解からはじまるマーティの女性ギタリスト論、Rieが語るYouTubeの“弾いてみた動画”の功罪、そしてJacksonギターの魅力など、ここ以外では読めない興味深い話がぎっしり詰まっている。

 

― Rieさんはどうやってギターの練習をしていたんですか?

 

Rie a.k.a. Suzaku(以下:Rie) 中学校にクラシックギター部があって、けっこうな名門だったこともあって毎日朝練と夕方の練習がありました。夏休みも毎日練習してましたね。エレキは中2の頃から『ヤング・ギター』とかを見ながら独学で練習してました。

 

マーティ・フリードマン(以下:マーティ) 友達と一緒にではなくて?

 

Rie ギター友達はいませんでした。バンドのメンバー募集をかけても連絡なんて全然こなかったし。

 

マーティ 世界的に見て、日本には女性ギタリストが圧倒的に多いんですよ。アメリカの女の人は男ほどモテたい気持ちがないです。でも、男はモテたいからギターを弾く。

 

Rie あはは!

 

マーティ ギターをちゃんと弾くのは難しいじゃん。それだけ難しい楽器の練習をするためには「モテたい」っていう気持ちがないと絶対続かない。だから女の人はそんなにギターを弾かないんです。あと、これも僕の考えですけど、ギター友達は大事。せめて二人で弾きたい。でも、もし女の人が男のギター友達を見つけたとしてもその男から絶対に言い寄られるから、ウザくなるんですよ。

 

Rie あはは!

 

マーティ しかも、女の子のほうが男よりも上手くなったらさらに問題になるんですね。

 

Rie 面倒くさい!(笑)

 

マーティ 女性ギタリストはたぶん全体の0.1%ぐらいしかいないからもっと増えてほしいし、応援したいんです。

 

Rie たしかに、私がメタルの世界に入ったときに女性ギタリストはほぼいませんでした。今でこそちょっと増えてきましたけど、それでもほとんどいない。

 

マーティ Rieさんがずっと弾き続けることでほかの女性をインスパイアすると思います。でも、僕がセミナーをやると集まるのは男ばっかりだし、そんなところに女の人は入りたくないじゃん。でも、その世界に入らないとギターは上手にならない。そういう意味でも女の人には壁が多い。

 

― しかも、Rieさんの場合はソロギタリストですもんね。

 

Rie バンドが面倒くさくなっちゃって。バンドの解散理由で「音楽性の違い」とかなんとか言いますけど、だいたいは人間性とかで揉めることが多いですから。私は音楽以外のことで頭を使うのが嫌なので「自分にはバンドは合わないな」って。

 

マーティ そうだったんですか。

 

Rie はい、バンドのときも私が全部曲を書いてたので、だったら一人でやるほうが気がラクだなって。

 

マーティ バンドって本当に奇跡みたいなものですからね。4、5人の人間がずっと一緒にいたら何か大変なことが起こりますから、バンドが上手くいくというのは人間関係がたまたま上手くいったということだと思います。本当にラッキーですよね。

 

Rie そうですね。バンドにはバンドのスタイルがあるので、そこから外れるとファンの方から「違う路線に行っちゃったね」って言われるけど、私はソロでジャンル関係なくやってるし、お客さんも何も気にせず聴いてくれるのでやりやすいです。

 

マーティ ギター以外のパートも自分で作ってるんですか?

 

Rie はい。全部打ち込んでます。ベースも自分で仮で弾いて、完成形に近いデモを人に渡してますね。

 

マーティ ライブのときは?

 

Rie 女性メンバーをサポートで呼んでます。

 

― Rieさんの肩書は“ソロギタリスト&コンポーザー“です。

 

Rie 曲も全部自分で作ってるので。作曲することが好きだし、何もないところからモノを作るのが好きなんです。

 

― 作曲とギター、どっちを褒められるのがうれしいですか?

 

Rie どっちも! あははは! どっちも同じぐらい好きなのでどっちか選べって言われると難しいですね。今って弾いてみた動画がたくさんあって上手い人もいっぱいいるけど、それがお金になるかっていうとそんなことはないし、自分で曲を書かないとお仕事にはならない。だから誰かの曲を上手く弾くんじゃなくて、ちゃんと自分で表現したいっていう気持ちがあります。

 

マーティ いろんな楽しみ方がありますよね。曲を作って完成させて世の中に出すっていうのがプロの世界だし、YouTubeでギターの楽しさを見せてくれることも本当にありがたい。でも、いくらYouTubeで上手くても、曲をゼロから作品にして人の元に届けるというのはまったく別の話で、まったく別の努力が必要。

 

Rie そうなんですよね。弾いてみた動画を見て「上手いからサポートお願いしようかな」と思って連絡するとアドリブがまったく弾けなかったり。

 

マーティ そういう話はすごくある。めっちゃ上手く弾けるように見えるけど、それ以外何も弾けなかったり。

 

Rie そういうことも多いです。すごく上手く見えるからほかのも弾けるんだろうと思って連絡するとそうではなくて断られるんです。

 

マーティ でも、さっきも言いましたけど、それでもいいんですよ。その動画を見たことがきっかけでギターを手に入れて音楽を始める人がいるかもしれないから。

 

― いまギターを始める人たちはYouTubeを見ながら練習できるんですね。

 

Rie うらやましいですよね。昔なんて譜面すら売ってないことがあったんで、カセットテープを何度も巻き戻して耳コピしてましたから。でも見方を変えると、最近の子は耳を使ってプレイしていないんですよ。耳コピができないし、タブ譜を見ないと弾けない、指板の音を覚えてないってことが多い。

 

マーティ 一長一短ですね。

 

― Rieさんはどういう練習方法をオススメしますか?

 

Rie バークリーの教本にあるように、五線譜の譜面を見ながら弾くことで指板を覚えられたりするのでいいと思います。タブ譜を見ちゃうとそこの音しか覚えないから、何フレットを弾けばその曲になるってことしかわからないんですよね。

 

マーティ 僕が思うのは練習を一切しないこと。練習する前に友達とバンドを組んでスタートする。最初はド下手でもとにかく演奏する。練習の方法はいくらでもあるけど、とにかくずっと演奏してればそのうち上手になるじゃない? だから、僕は一切練習したことはないし、常に弾きまくってるうちに自分が何をやってるのかわかるようになりました。

 

― そうなんですね!

 

マーティ ロックファンの人たちは真面目に練習をするのには向いてないと思いますね。まあ、日本人には真面目な人が多いけど、ニルヴァーナのカート・コバーンは譜面とかタブ譜とか見てないし、スケールを理解しようともしてなかっただろうし、練習する意識すらなかった。でも、彼は音楽をやりたかったから自分なりにギターを弾いて、バンドをやって、自分の音楽を作った。人それぞれのやり方があるけど、とにかく演奏をすればするほど上手くなると思います。

 

― でも、「経験はないけどとりあえずバンド組んじゃえ!」っていう思い切りのあるキッズは日本にはいないでしょうねえ。

 

Rie 軽音楽部ならあるかもしれないけど。

 

マーティ それは文化ですよね。日本の家にはガレージがないですよね。アメリカだとクリスマスにギターをもらった子供がいて、同じくベースをもらった近所の友だちと一緒にガレージでガーガー音を出して、それがとにかく楽しくなる。でも、ガレージでデタラメに楽しむっていうステップを経験できる人が日本には本当に少ない。

 

Rie うんうん。

 

マーティ あと、日本人には下手なものを人前で見せてはいけないっていう考え方がある。それはある程度は同意しますけど、向こうにはそういう考え方はない。下手でも上手でも関係なく盛り上がってるのを見せるってことが多いから下手なヤツでもバンドを続けられる。

 

Rie (笑)。

 

マーティ でも、そうしているうちに自分なりの宝石を見つけることもあるから、それはいいことだと思います。

 

Rie 私はバンドメンバーが全然見つからなくて専門学校に行くまで家でずっと一人で弾いてたタイプなので、そういう環境にいられる人がうらやましいです。メタルバンドがやりたかったけど、そんな人は地元に一人もいなくて。

 

― でも、今はこうして何枚もアルバムを出せているわけで。

 

Rie 諦めなければなんとかなるんだなと(笑)。

 

― ここまでギターを続けてこられた理由はなんだと思いますか?

 

Rie とにかくギターが好きだってことです。好きこそものの上手なれじゃないですけど、好きじゃないと続かないですよね。ギターが好きだから基礎練習を何時間やっても飽きないし、それどころか楽しい。それに尽きます。

 

Marty Friedman X Rie Aka Suzaku Special Interview D

 

― RieさんはいつからJacksonのギターを使っているんですか?

 

Rie 高校生の頃からです。アレキシ・ライホが好きで、彼がJacksonを使ってるのを見てカッコいいなと思ったんです。それで自分もどうしても同じギターがほしいと思って御茶ノ水まで買いに行ったらドクロのランディVに一目惚れして、お姉ちゃんに借金して買いました。中古で18万4千円したんですけど、バイトしてコツコツ返しました。それからずっとJacksonですね。

 

― マーティさんが初めて買ったJacksonはKellyだったんですよね。

 

マーティ そうですね。当時13万円、今でいうと30万ぐらいでした。当時、ガチメタルギターはJacksonだけだったので「メタルをやるならこれしかない」と思って買ったんですけど、とても気に入りました。自分の知名度が少し上がったらいろんなギター会社からオファーが来たけど、僕はJacksonを選びましたね。

 

― RieさんはJacksonギターのどんなところに魅力を感じていますか?

 

Rie 私はランディVが一番好きで、普通のフライングVだとボディがデカすぎるんです。ランディVってランディ・ローズの為に設計されていて、ランディ自身が小柄な人だということもあって、そういう人に合う大きさになってるんですよね。でも、ランディVを弾くときはピッキングの角度が普通のストラトタイプのギターと違ってくるので、これに慣れると普通のギターが弾きづらくなります(笑)。

 

― 女性ギタリストでも弾きやすい。

 

Rie そうですね。小柄な女性が持ってもギターに持たれてる感は出ないと思います(笑)。この形だからいいんですよね。

 

― マーティさんが自分のギターに求めるものってなんですか?

 

マーティ このギター(PRO SERIES SIGNATURE MARTY FRIEDMAN MF-1, PURPLE MIRROR)は上手く演奏できなくてもアクセサリーとして見た目がカッコいい。ビギナーでもカッコよく見えるのは刺激になると思います。これを持つだけでモテます。あと、このギターはミラーバージョンなんですけど、通常バージョンは白いバインディングが圧倒的に広くて、会場の奥からでも見える。Jacksonのギターのクオリティは世界一だし鉄板だから、このギターを作るときに僕は敢えてアクセサリーとしてのことを一番に考えました。あと、僕のシグネイチャーEMGピックアップがついていてカスタムはまったくしていないから、僕のアルバムで鳴ってるのと同じ音がこのギターですべて出せます。

 

Rie ギターに対する考え方がまったく違いますね! フロイドローズでもないですもんね。

 

マーティ そうですね。僕はアーミングとかしないので。そんな複雑なものがあると僕はアホなので変なことをしちゃうけど、これだとそういう間違えをすることがない。どんなに暴力的に弾いたり大暴れしてもチューニングをしっかりキープしてくれるので問題はゼロです。細かいパーツが付いてないので壊れるものが少ないんですよ。まあ、これは考え方次第ですね。

 

Rie プレイスタイルによりますね。私はアームが好きなので、これがないと生きていけない(笑)。

 

マーティ アームがないとダメなら僕のギターはダメですね(笑)。

 

― お二人がJacksonのことを知らない人にJacksonのオススメポイントを伝えるとしたらなんと言いますか?

 

マーティ 道具として唯一無二だということですね。僕は楽器に対して優しくないし、ライブやレコーディングでも強く弾いたりするけど、これは変な言い方ですけど、Jacksonはすごく男らしい楽器です。壊れないです。チューニングも崩れないし、メタル以外の音楽にも対応できるということをもっといろんな人に知ってほしいです。

 

Rie 私の音楽はメタルだけじゃなくてフュージョンとかバラードとかいろんな表現をしているんですけど、全部Jacksonだけで弾いてるんですよ。ボリュームの調整とか色々と細かい表現にも対応できるので、これさえあればどんなジャンルでも弾けると思います。マーティさんがおっしゃるようにJacksonはメタルのイメージが強いけど、どんなジャンルでも普通にイケます。

 

― Rieさんはこの機会に何かマーティさんに聞いてみたいことはないですか?

 

Rie マーティさんはピッキングが独特ですよね。昔、『ヤング・ギター』に付いてたDVDを観ながらいろんな人のピッキングを研究したことがあって、みなさん独特だったんですけど、マーティさんが一番独特でした。手首が腱鞘炎になりそうで。

 

マーティ 僕は自分の欲しい音を出すためになんでもするっていう考え方だから、そのやり方をうまく人に説明できないんですよ。でも、人の分析をするのはあまり意味がないですね。

 

Rie はい、結局意味はなかったです。自分の手は人とは違いますからね。

 

マーティ 僕がもし人のピッキングを真似しようとしたら怪我する可能性がある。僕のピッキングはブサイクですよ。ピッキングしてるライブ写真は手のところをトリミングしてほしいぐらいです。

 

Rie あはは!

 

マーティ 人のピッキングを真似するよりも、出している音を分析してほしいですね。ノートチョイスとかメロディセンスとかモチーフとかメリハリとか音楽的なことを考えてほしいです。

 

Rie わかります。最終的に大事なのは出音なので。プレイはいいんだけど音が……っていう人は多いですし。昔、先生から言われたことがあるんですけど、いい音を知らないで自分がどうやっていい音を出すんだ、だから自分に投資していっぱいライブを観に行けって。それで私はありとあらゆるライブを観に行きまくっていい音を知ったし、そうすることで自分の出したい音がわかるようになりました。でも、それを知ってる子は少ないんですよね。

 

― そうなんですか?

 

Rie メタルバンドの知り合いはいっぱいいるんですけど、そういう子たちをいろんなライブで見かけることはないし、むしろファンの人に会うことのほうが多いんですよ。「LOUD PARK」に行ってもファンの人には会うのにミュージシャン仲間には会わない。それが残念だなって思います。

 

― たしかに、自分でお金を払って人のライブを観に行くミュージシャンってあまり聞かないかもしれない。

 

Rie 実際、ファンの人のほうが音楽について詳しいんですよ。

 

― では、今後の活動についてお聞きします。Rieさんは今年、『World Journey 2』をさらに全国へと届けにいくという感じですか?

 

Rie いや、もう新しいアルバムを作ってます。作品は毎年出したいので。もう14枚も出しているんですけど。

 

マーティ おお、素晴らしい!

 

Rie 今年もこれまでとはまったく違ったものを作ろうと思ってます。6月にレコーディングをする予定です。

 

― すごいですね。休みたくならないですか?

 

Rie 本当は休むつもりだったんですけど、アイデアが湧いてきちゃったので「じゃあ、やるか!」みたいな。来年に出すアルバムのコンセプトももう決まってます(笑)。

 

― 今は続々とアイデアが湧き出てくるタイミングなんですね。一方、マーティさんはインドのバンドとコラボしていますね。

 

マーティ ああ、インドのスカイハーバーというバンドの作品にゲスト参加したり、逆にあいつらが僕のアルバムに参加してくれたり。僕は自分にできないことをしている人たちとコラボしたいですね。インドの人のポリリズムのセンスがとても面白くて、彼らのインド的な変拍子を自分の音楽に取り入れるのが新鮮です。

 

― では、今年の予定はいかがですか?

 

マーティ 新曲をいっぱい作るし、今年はライブをいっぱいやりたいですね。夏か秋ぐらいに全国ツアーをするつもりだし、冬にはオーストラリアとか南米を回ると思います。

 

― お二人がどこかで共演する機会があったらいいですね。

 

マーティ 面白いですね!

 

Rie やってみたいです!

 

 

前編はこちら

 


マーティ・フリードマン

アメリカでの音楽活動を経て、2004年に活動の拠点を日本・東京へと移す。 2005年からテレビ東京で放送された伝説のロックバラエティ番組『ヘビメタさん』にレギュラー出演し、日本国内のヘヴィメタルファンだけではなくYouTubeを通じて世界のヘヴィメタルファンを驚かせた。続編レギュラー番組『ROCK FUJIYAMA』は世界各国で話題の番組となる。 その後、テレビ番組に多数出演。雑誌や新聞でも連載を持ち、初の執筆書籍『い~じゃん! J-POP だから僕は日本にやって来た』はベストセラーに。2008年には映画『グーグーだって猫である』『デトロイト・メタル・シティ』にも出演。ギタリスト、作曲家、プロデューサーだけにとどまらず、テレビ、ラジオ、CM、映画などさまざまな分野で活躍している。

ROCK FUJIYAMAチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCLmF8nkHDUap8ztsGnROWqg

Marty Friedman Official YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC8p0ZqjT7f_zZiS-py5w-WQ

Marty Friedman Official Web
http://martyfan.com/

 

Rie a.k.a. Suzaku(リエ エー・ケー・エー スザク)

神奈川県川崎市出身。作詞、作曲、アレンジ全てを手がけるロックギタリスト&コンポーザー。2010年のデビュー後、ソロアルバムを多数リリースしている。

Rie a.k.a. Suzaku Official Web
https://www.poppin.jp/rie_web/