MARTY FRIEDMAN × ROLLY SPECIAL INTERVIEW(後編)

6月 9, 2022

マーティ・フリードマンとROLLYによる対談後編は、例の“ギターソロスキップ問題”から始まる。一流のギタリストはこの話にどんな見解を持っているのか。そんな話の流れでふたりに挙げてもらった最近好きなギタープレイは、それぞれのキャラクターが色濃く出るチョイスとなった。どれも興味深い話ばかりだったのだが、一番引き込まれたのは“ギターを始めるにあたって、いろんな音楽を聴くべきか否か”。ふたりとも両極端な話をしているようでいて、実は根っこはまったく同じ場所にあるというところに、彼らが惹かれ合う理由の一端が見えた気がした。

 

― 最近、サブスクで音楽を聴くときにギターソロが来たら飛ばすという話が話題になっていましたけど、おふたりはこのことについてどう感じていますか?

 

ROLLY 若い人たちは普段触れてる情報量が多すぎて時間がないのかな。

 

マーティ・フリードマン(以下:マーティ) もちろん、それもあると思います。でも、もう一つ理由があって。ありがたいことに日本人はギターを聴くのが好きです。これは僕の持論ですけど、ひいおじいちゃんたちの三味線文化のお陰で歪んでる弦の音は日本人の心にある。なので、日本の音楽にはどんなジャンルでもどこかにギターの存在感がある。でも、それが当たり前になってくると世の中のプロデューサーたちは「とにかくギターソロを入れなきゃいけない」っていう義務感に駆られてしまって、ギターソロが一番節約する場所になってしまう。

 

― それはどういうことですか?

 

マーティ ヒット曲をつくるにはお金がかかるんですよ。ソングライター、アレンジャー、プロデューサー、エンジニア……みんなお金がかかる。だから、ギターソロはギターを弾けるベーシストに弾かせたり、プロデューサー自ら弾いたりすることもある。なので、「とにかくこの8小節はギターソロを弾かなきゃいけない」っていう感じで弾いたものは真っ先に飛ばされるんじゃないですかね。

 

― なるほど。

 

マーティ さっきのブライアン・メイの話に戻ると(前編を参照)、彼は超意味のあるギターを弾くから、彼のギターソロはその曲に存在する権利がある。でも、とにかくギターソロが必要っていう気持ちで入れた曲だとそこを飛ばす人がいてもおかしくない。それでも、日本は海外よりもまだマシだと思います。海外ではギターソロ自体が消滅しているから。だから、みんな頑張ってほしい。僕も頑張りたい。みんなブライアン・メイみたいないいセンスで弾いてほしいです。それができないというなら編曲からギターソロをカットしてもいいんじゃない?

 

ROLLY 一度、全人類の音楽からギターを禁止したらいいんちゃうかな。絶対にギターを弾いてはいけない。所持までは許されるけど、弾いてはいけない。隣の人同士で見張って、「うちにギターはあるけど、弾いてはいけない!」って……何が言いたいかというと、簡単にチョコとかクッキーみたいに手に入りやすいからいかんのだね。全員がブライアン・メイぐらい弾けちゃうと、これはまた同じことが起こってしまうかもしれない。

 

マーティ いや、でもテクニックの話じゃないと思います。曲との相性とか曲への相応しさ。ニルヴァーナのソロも相応しいと思います。

 

ROLLY ああ、そうね。

 

マーティ そんなに腕はなくてもセンスとかで曲に必要なものを弾いてる。そういう幅広いスタイルを持ってる人が生き残ると思いますね。だから、テクニシャンじゃなくても大丈夫。

 

ROLLY 僕は、自分が言ってることをさらにぶち壊そうとしているかな。つまり、そこにないことをやれ、ということ。全員がそれぞれに素晴らしいことをやったら、さらにその上をいかないといけないから常にフレッシュな気持ちでいることが大事だと思いますね。

 

マーティ こないだ、[Alexandros]のライブを観に行ったら、ギターの存在感がおいしかった。いらない部分がない。一聴すると超ギターバンドとは思えないんですけど、ずっとギターを弾いてるし、曲自体をしっかりサポートしている。しかも、ギターがフィーチャーされるときもしっかりあってすごくカッコいいフレーズを弾いてるので、全然飛ばしたいと思わない。彼らはどうやったら新鮮になるかっていうことを常に意識しているんじゃないですかね。

 

― 惰性でギターソロを弾くのではなく、その曲が必要としているなら弾けばいいっていう。

 

マーティ 言ってみれば、大事な土地ですからね。1曲3分の中の8小節って大事な土地ですよ。家賃で考えたらいくらかかるか。だから大切に使わないと。

 

― わかりやすい。

 

マーティ あと、日本人って出された料理は美味しくなくても全部食べるじゃん。日本人は優しいから今までそうやってギターソロの存在も許してくれてたんですよ。でも、そのうち「このギターソロ、飛ばしたい」ってなってきて、「これからは好きじゃないギターソロは聴きません!」っていうスタンスになったんじゃないですか?

 

ROLLY 好きじゃないギターソロは聴きませんって言えるということは、好きなギターソロの目利きができてるってことよ。

 

マーティ でも、実は僕も曲は途中で飛ばすんですよ。

 

― そうなんですか!?

 

マーティ 最初の1小節でその先も聴きたいかどうかわかるじゃん。

 

ROLLY うんうん。

 

マーティ そういうのはギターソロだけじゃなくて、イントロでも判断するじゃないですか。イントロを聴いて「この曲は絶対に好きじゃない」ってわかるから飛ばすっていうのはみんなの権利ですからね。

 

ROLLY ギターソロを大切だと言ってるマーティさんもイントロの1小節で「これは聴かなくていい」とわかってしまうというね。最近、イントロで判断して飛ばしちゃう人がいるから、いきなり歌っていうパターンも増えてるよね。

 

マーティ 曲を飛ばすことがなかなかできない時代には、聴いてるうちに好きになるスルメ系の曲っていうのもあったよね。そういう曲って一回聴いて気に入る曲よりもさらに好きになる。そのほうがリッチな音楽体験になる可能性があるじゃん。でも今の時代だと、さっき言ったように、「イントロ嫌い、パス」ってなる。どっちがいい悪いというよりも、不思議な聴き方ですよね。

 

ROLLY たしかに、「一回目はそうでもなかったな、でももう一回聴こう」って聴いてるうちにだんだんよくなるっていう。でも、今の時代に生まれた人はここがスタートなんだよね。

 

マーティ これは曲を気に入るかどうかとは別の話なんだけど、実はそういう聴き方よりも、自分の人生とつながっているBGMのほうが曲の好みに関しては大事なことのひとつだと思います。たとえば、好きな彼女と一緒にいるときに流れていた音楽は、表面的には嫌いだとしても、自分だけの経験と結びつくことですごく好きになる。

 

― そういうことはありますね。

 

マーティ だから、それは曲を飛ばすというのとは違ったものですよね。そういう聴き方に関してつくってるほうは何もコントロールできないじゃん。どうすればいい?僕らは。

 

ROLLY 自分たちが面白いと思うことをやるしかしょうがない(笑)! 4歳か5歳の男の子と女の子が、メタリカを弾いてる動画をよく『ROCK FUJIYAMA』に送ってくれるんですけど、生まれたときからスマホとかエレキギターがあって、そこがスタートだから、また違う人生になるよね。

 

― たしかに最近はバカテクのキッズが多いですよね。

 

ROLLY 僕はテレビでキッスを見ていたからチョーキングというものを知ってたけど、昔の人はバンドが動いているのを見たことがないから、チョーキングを知らない人が多かった。そういうふうにその時代のテクノロジーに合わせるしかないよね。

 

マーティ でも、聴いてる人は気まぐれだから、次の大ヒット曲にギターソロが入ってたらまた5年はギターソロが流行ると思う。

 

ROLLY そうね。

 

マーティ (マイケル・ジャクソンの)「Beat It」にギターソロが入ってるじゃん。あれはギターの命を5年ぐらい延ばしてくれたんですよ。

 

ROLLY ホンマや。

 

マーティ あの曲はギターソロがなくても売れたじゃん。でも、そのお陰でそのあともギターソロが続いた。なので、たとえばアデルさんが新曲でギターソロを入れてくれたらまた延びる。ラッパーとかもね。僕、ラッパーとコラボしたいんですよ。そうしたらまた新しい耳をもった人たちが聴いてくれる。

 

Marty Friedman X Rolly 4

 

― では、最近印象に残ってるギタープレイって何かありますか?

 

マーティ 僕はマテウス・アサトさん。日系ブラジル人なんですけど、彼とリモートでコラボしたら本当に素敵なものができたんです。彼はとても美しいセンスの持ち主で、もちろん腕もあるんですけど、何より彼の温かい気持ちが伝わってくるんですよ。腕がある人はたくさんいるけど、愛とかなんらかの気持ちがあるとテクニック以上に楽しめる。なので、僕は彼の演奏を聴くのがすごく好きです。

 

ROLLY どんな曲だか聴きたくなりますね。音源はありますか? いま聴きたい! 

 

(実際のライブ映像を流す)

 

マーティ 彼が演奏をした動画に僕らがライブで合わせたんです。何をやるか事前に打ち合わせして、彼が先に自分の演奏を撮って、僕らはその映像と音源に合わせて生で弾きました。複雑だったけど、うまくできたと思います。

 

― これはいいですね!

 

マーティ タッチはまろやかだし、繊細でいいギタリストです。攻撃的にも弾けるし、幅広いセンスがいいです。新しいと思います。

 

― アルバムは出しているんですか?

 

マーティ 出してないです。出してほしいです。

 

ROLLY 僕が気に入ってるのは、アフリカの貧しい国の子供がオイルの缶に棒をつけて、一本だけ張った弦を弾く動画。そういうのを観ると僕はグッときますね。「これが音楽だ!」って。ハイテクニックではなくても魂がこもってるというかね。

 

― わかるような気がします。

 

ROLLY 昔、津軽三味線の名人・高橋竹山という人のインタビューをテレビで観たんですけど、「三味線を弾くにあたってどんなことを考えますか?」という質問に、「三味線を弾くにあたって三味線だけを聴いて、三味線だけを練習したらダメなんだ。ギター、ウクレレ、バンジョー、バラライカ、ヴァイオリン……ありとあらゆる世界中の音楽を聴いて、それぞれの魅力を体験した上で三味線を弾くんだ」って。まさにそれだなと。今の話の答えにはなってないと思うんですけど、僕が言ってることは最初から最後まで一貫してるんですよね。

 

― これからギターをやってみたいと思っている人は、いろんな音楽を聴くことも大事だと思いますか?

 

マーティ いや、自分の好みが大事。いろんな音楽を聴いてくださいっていうアドバイスがあるけど、それはダメだと思いますよ。自分の好きな音楽をたっぷり分析してほしい、たっぷり体験してほしい。興味がなければ身につける必要ない。世の中なんでもできる人はいっぱいいるけど、ギター雑誌とか音楽雑誌の表紙にそういうなんでもできる人は出ない。ジミヘンはなんでもできるヤツじゃない。僕もなんでもはできない。なんでもできなきゃいけないという意識は、裏方で働いてる人たちにはぴったりだと思いますけど、若い人たちはそのためにギターを手にするわけではないですよね。みんな、自分の音楽の夢を叶えるためにギターを始めるわけだから、自分の好みをたっぷり研究しなきゃいけない。なんでこれが好きなのか、どうやったらこの好きなことをやれるのか、そのために自分の好きなものをたっぷり分析する。僕も子供の頃はよく言われました。「この人を聴くべきだよ」「この人、上手いから聴かないと損だよ」って。でも、僕はそれを聴いても楽しくなかったし、自分が本当に好きな音楽を聴きたかった。それに、自分が好きじゃない人たちの音楽を研究して、練習して、腕を磨いてしまうと、自分が好きじゃない音楽になっちゃうんですよ。

 

― なるほど。

 

マーティ だから、そういう音楽のことは完全に忘れて、いくら変な組み合わせだとしても、自分の好きな音楽だけを深く理解しようしたからこそ僕にはできないことが非常に多いんです。でも、その代わりに自分のやりたいことは自分なりにちゃんとできるようになったと思うし、自分のことを信じて人前でも演奏できるようになった。もし、僕がたくさん練習していいジャズギタリストになったとしても、自分のなかにジャズの要素はそんなにないから、所詮はエセジャズギタリストだし、お客さんとしてはジャズが大好きな人の演奏のほうが聴きたいと思うんですよ。

 

ROLLY マーティさんの言ってることはもっとも。で、一見すると真逆のようでいて、高橋竹山さんが言ってることも実はマーティさんと同じだと思う。お勉強ではなくて、「ジャズのこの部分がいいな」「クラシックのこの部分がいいな」って自分の好みを追求しなさいよっていうことを髙橋さんは言ってる。だから答えは一つで、好きなことをやりなさいっていうことですね。

 

マーティ 好きな道を歩んだら最終的には面白いものになるんですよ。ROLLYさんとは何年も一緒にやってますけど、彼はいつも新しい発見をしています。彼がブロードウェイ・ミュージカルとハードロックとバブルガムとエスニック音楽を自分なりに組み合わせているように、これからギターを始める人たちも自分の好きなものだけに集中すれば自然と隣の人と違うものになると思います。それを若い頃から大事にしてほしいです。

 

― なるほど。

 

マーティ 隣のヤツがみんな流行りの曲を演奏してて、そいつが完コピしてたらそっちのほうがカッコよく見えるじゃん。でも、それはダメだよ。みんなと友だちになりたいし、「僕はこっちのほうが好き」ってなかなか言いづらいと思うけど、自分の好みを大事にしないといけない。守らないといけない。

 

ROLLY 僕が中高生の頃、アマチュアバンドが10組ぐらい集まって公民館を借りてコンサートをやってたんですよ。ひとバンドにつき持ち時間20分ぐらいかなあ。1曲目はだいたいツェッペリンの「ロックン・ロール」で、あとは「バーン」と「ハイウェイ・スター」と「ホテル・カリフォルニア」。みんな、一生懸命指板を見ながらリッチーと同じように弾こうとしてる。でも僕は「もっと違うこと弾いてもええんちゃうの!?」って思ってた。人と同じことじゃなくて、指板を見ないで1音だけでフィードバックさせたり、あんたのやり方でやればいいのにって。

 

― なんで若い頃からそんな感覚があったんですか? 自然とですか?

 

ROLLY 多分、自然とですね。

 

マーティ それはアーティストの考え方ですね。アーティストと趣味で演奏するのとでは考え方は全然違っていて、どっちがいいかはまったく別の話なんですけど、趣味で弾いてる人は完コピができたときの達成感がすごく楽しい。だから、ギターを買った人にはそれを味わってほしい。残念ながら僕はそういう達成感はそんなに味わったことないんですけど。

 

ROLLY 僕も一度も完コピしたことない(笑)。

 

前編はこちら

 


マーティ・フリードマン

アメリカでの音楽活動を経て、2004年に活動の拠点を日本・東京へと移す。 2005年からテレビ東京で放送された伝説のロックバラエティ番組『ヘビメタさん』にレギュラー出演し、日本国内のヘヴィメタルファンだけではなくYouTubeを通じて世界のヘヴィメタルファンを驚かせた。続編レギュラー番組『ROCK FUJIYAMA』は世界各国で話題の番組となる。 その後、テレビ番組に多数出演。雑誌や新聞でも連載を持ち、初の執筆書籍『い~じゃん! J-POP だから僕は日本にやって来た』はベストセラーに。2008年には映画『グーグーだって猫である』『デトロイト・メタル・シティ』にも出演。ギタリスト、作曲家、プロデューサーだけにとどまらず、テレビ、ラジオ、CM、映画などさまざまな分野で活躍している。

ROCK FUJIYAMAチャンネル
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Marty Friedman Official YouTubeチャンネル
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Marty Friedman Official Web
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ROLLY 

9月6日生まれ(1963年生まれ)大阪府高槻市出身。
90年「すかんち」のヴォーカル&ギターとしてデビュー。96年バンド解散後ソロ活動を開始。近年はキングレコードより日本のロックカバー集『ROLLY'S ROCKCIRCUS』『ROLLY'S ROCK THEATER』を発売。ディズニー映画『モアナと伝説の海』にてタマトア役の声優として出演。ミュージカル『ロッキーホラーショー』(演出:河原雅彦、出演:古田新太他)では音楽監督、訳詞、出演を担い、舞台でも活躍中の今年59歳。
ロック、シャンソン、ジャズ、クラシック、演劇、読み聞かせ、作詞、作曲等、何にでも手を出す粘着質で小心者の永遠の小学5年生を自称している。天性のキャラと、独特のサービス精神で観る人に違和感と恍惚感を与える日本代表であり、より一層“地に足の着いた変態”に磨きをかけるお茶の間のロックスター。

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