Marty Friedman Special Interview (後編)

9月 14, 2023

 

10代の頃、プロミュージシャンを志していた頃になけなしの金をはたいて手に入れたジャクソンギター。プロフェッショナルな現場で求められる要素すべてを持ち合わせた相棒を入手して以降、マーティ・フリードマンの傍らにはいつもジャクソンギターがいた。インタビュー後編では最近の音楽活動から、メガデスとして念願だった初の日本武道館公演にゲスト出演した話、そしてギタリストとしての展望などについて話を聞いた。

 

― 最近の音楽活動についてお聞かせください。今年のメガデスの日本武道館公演に、マーティさんがゲスト参加したのはビッグニュースの一つです。歴史を振り返ると、93年にメガデスの武道館公演が予定されていて、メンバーの健康上の理由でキャンセルになり、そのあとメガデスは武道館でのライヴを行っていなかった。マーティさんも2000年にメガデスを脱退。以後、共演はありませんでしたが、今年の武道館公演にマーティさんも参加。どういう経緯で一緒にやることになったんですか?

僕がメガデスを脱退したのは23年前ですが、僕とデイヴ(・ムステイン)には武道館で演奏できなかったモヤモヤが、23年間ずっとどこかにあったんです。僕らはあれからずっと仲がいいけれど、武道館でライヴをするって決まった時にデイヴから連絡が来て。お待たせしましたって感じで(笑)。“一緒にやらないか?”と言われたので、喜んでやりますと言って。本当に奇跡ですね。

 

― 武道館という場所がポイントだったんですね。

僕がメガデスにいた頃は武道館が夢だったんです。紆余曲折あってメガデスとしては武道館ではできなかったので、いくら僕らが成功してもそのモヤモヤした黒い雲はずっと頭の隅にあったんですね。お互いの成功を応援してきたから、今回は理想の再会で、とてもいい節目でしたね。実は武道館のあと、ドイツのメタルフェス〈Wacken Open Air〉でも一緒にもやったんです。でもそれは本当に偶然で、同じフェスに出ているから出ないわけにいかないじゃんって話で。なので、たまたま一緒にやっただけで。これからは何もやるつもりはないんですけど。

 

― 今後の共演はなし? あの武道館だけですか?

武道館だけ。それほど二人の間では武道館が大事だったんです。たぶん海外のミュージシャンは武道館への憧れがある人が多いんです。日本でもそうなんですけど。海外のミュージシャンはチープ・トリックとかで武道館の名前を聞くと思うんだけど、当時は“武道館って一体なんですか?”と。犬の名前かなって(笑)。とにかく、ロックミュージシャンとして武道館でやりたいって。僕はメガデスの前に武道館で8回ライヴをやっていたけど、メガデスではやっていなかった。だから、どうしても武道館でやりたかった。その夢が叶ったのはデイヴさんのおかげです。

 

― 結構、リハーサルはやったんですか?

武道館の前に浦安で1本ライヴをやった時のサウンドチェックに飛び入りして、一緒にジャムったんですよ。メガデスは今も演奏はバッチリだから、楽勝中の楽勝でした。

 

23年経ってもいつでも参加できる感じ?

全然できます。僕の演奏はあれからかなり成長しているし、音の伸び方やフレージングのセンスとか考え方も昔とは違うから、今だったらもっとカッコ良くできるのにって思うけど、ファンの皆さんは昔のままを期待しているから、できる限り当時のままのフレーズで弾いてみようと思いました。いくらでもアップデートできるけど、ファンにとっては当時のフレーズに思い入れがあるので。でも、昔の自分の演奏を分析するのは面白かったです。今じゃ絶対にやらないことをたくさんやっていましたね。例えば、ギターソロのあとけっこうルートで始まるんですよ。「トルネード・オブ・ソウルズ」もルートで始まるけど、今は絶対にルートで始めない。今聴くと“え?まじかよ、やめようよ”って。

 

― 武道館でマーティさんは3曲ゲスト出演しました。

武道館ではどの曲も気力や記憶で弾けるような雰囲気。不思議だよね、長い間一緒に演奏していないのに。バンドやデイヴの音が体に染み込んでいるから、音を聴くと自然とリアクションが出るんですよね。

 

― 武道館が終わったあと、デイヴさんとどんな会話がありましたか?

終わったあと、お互いに“ありがとう”って。スタッフにもとてもよくしてくれたし、学校の同窓会のような雰囲気でした。彼のバンドメンバーもみんな大好きだから、本当に楽しい現場でした。

 

― ファンの方も思い出があるので、また見たいと思っていると思います。

思い出があるのは嬉しいです。でも、僕は新しいことをしたいタイプだからこのくらいでちょうどいい。楽しかったし、ファンの笑顔を見られたのもすごく良かった。1〜2回だから大事にしてもらえる。親戚が自分の家に遊びに来たら嬉しいけど、その親戚が1ヶ月も家にいたら“まだいるの?”ってなるでしょ(笑)?

 

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― (笑)。ギタリストとしての進化や次の目標はありますか?

去年から新しいアルバムの制作が始まりました。冒険的なコンセプトでドラマチックです。以前に『Scenes』というアルバムを出したことがありますが、喜多郎さんと一緒にプロデュースした作品で、ファンからも評判が良くて僕も大好きなんです。それから僕もいろいろな経験を重ね、演奏の表現力も非常に上がったので、“今の自分がもう一度同じようなアルバムを作ったらどうなるだろう?”という感じのアルバムです。制作もアーティストとして興奮する部分がたくさんあるから本当に良かったと思っていますし、今はレコーディング中ですが来年の春までには発売したいです。

 

― 発売が楽しみです! 最後にビギナーへメッセージをお願いします。

ギターっていろいろな楽しみ方があるんです。もちろん、プロを目指している人たちはある種のモチベーションがあると思いますが、家でギターを楽しんでいるお父さんはそれだけで幸せですよね。人前で演奏したくなければYouTuberギタリストの楽しみ方もあるし、家にいながらでもYouTubeで学べる。ギターの楽しみ方が僕の子どもの頃とはまったく違うし、American Series Virtuosoのような良いギターが手に入りやすくなったのは大きいよね。

しかも、ギターは楽器としてドラムやヴァイオリンと比べたら全然簡単。だから、”ギターは難しい”とかいう恐怖心は無視して、安くてもいいからギターを手にして、演奏をして楽しさを味わってほしい。いくら上手くても、プロになるのは宝くじに当たるぐらいの運がないとダメだと思うけど、ギターを楽しむこと自体は始めたその日から楽しめる。Day 1からコード一つでもいける、その気持ちをみんなに味わってほしい。また、アクセサリーとして持っているだけで他の人と違う存在になれる。それはギターの不思議な魔法だと思う。

 

 

前編はこちら

 


 

【プロフィール】

マーティ・フリードマン

アメリカでの音楽活動を経て、2004年に活動の拠点を日本・東京へと移す。 2005年からテレビ東京で放送された伝説のロックバラエティ番組『ヘビメタさん』にレギュラー出演し、日本国内のヘヴィメタルファンだけではなくYouTubeを通じて世界のヘヴィメタルファンを驚かせた。続編レギュラー番組『ROCK FUJIYAMA』は世界各国で話題の番組となる。 その後、テレビ番組に多数出演。雑誌や新聞でも連載を持ち、初の執筆書籍『い~じゃん! J-POP だから僕は日本にやって来た』はベストセラーに。2008年には映画『グーグーだって猫である』『デトロイト・メタル・シティ』にも出演。ギタリスト、作曲家、プロデューサーだけにとどまらず、テレビ、ラジオ、CM、映画などさまざまな分野で活躍している。

 

ROCK FUJIYAMAチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCLmF8nkHDUap8ztsGnROWqg

Marty Friedman Official YouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UC8p0ZqjT7f_zZiS-py5w-WQ

Marty Friedman OfficialWeb

http://martyfan.com/